糖心原创vlog

研究機関誌「FOOD CULTURE No.27」アジアのソイソース 『日本におけるアジアのソイソース利用』

フードコーディネーター?调理文化研究家 福留 奈美

アジアのソイソース 『日本におけるアジアのソイソース利用』

アジア各国には、大豆とその他の穀物を主原料とするソイソースが多様に存在する。本誌「シリーズ アジアのソイソース」では、これまで韩国、フィリピン、タイ、ベトナムに赴き、現地のソイソース製造と利用法について調べた結果を報告した。本稿では視点を変えて、日本におけるアジアのソイソース利用について取り上げる。
东京オリンピック2020が间近になり、都市部だけでなく地方においても外国からの来日客が増えていることを感じる。その数は、2016年に过去最高の2,400万人を数え、8割以上がアジアの国々からの旅行者であった(図1)。
2016年现在の在留外国人の数は(図2)、総数230万人强、その3割近くが中国、2割近くが韩国、そしてフィリピン、ブラジル、ベトナムからが多い。1991年以降の推移では(図3)、総数は2倍近くに増え、中国?台湾、フィリピン、ベトナムやその他の国からの人が増えていることがわかる。
2008年7月、文部科学省ほか関係省庁(外务省、法务省、厚生労働省、経済产业省、国土交通省)は、2020年を目途に30万人の留学生受入れを目指す「留学生30万人计画」を策定し、2015年度には日本の教育机関に在籍している外国人留学生の数が初めて20万人を突破した。日本で暮らす外国人は着実に増えている。
観光目的の外来客は、短期间の滞在中に日本の食べ物を本场ならではの味として试し、楽しんで帰っていく。しかし、日本に「暮らす」ことを决めた外国人たちは、祖国の味を懐かしく思い、祖国の调味料を使った料理を作りたいと思うのではなかろうか。また、日本にきて数年あるいは数十年になる长期の在留者や在日二世?叁世の方々は、どのように祖国の味を再现しているのだろうか。
笔者は、20代前半にフランスで1年间滞在したときに何が恋しくなったかというと、しょうゆ味のだし汁と渍物だった。初めはおいしくて感动したフランスパンのサンドイッチも日常生活の中では饱きがくる。アジア食材店で买った日本のしょうゆと素麺で、昆布茶少量に高知から持参した鰹节をパラリとふりかけただけの汁素麺を作り、简易的ながらも懐かしいだしの味にほっとした。异国の小さな街でも、探せばしょうゆを入手できることをありがたく思った。
本调査では、とくに先行调査した韩国、タイ、ベトナム、フィリピンの4か国に、自国の特徴的なソイソースを有する中国?台湾、インドネシアを加え、日本に住むアジアにつながりのある人々に话を闻いた。ソイソースを中心に祖国の味を再现するために欠かせない调味料にどのようなものがあるのか、果たして日本のしょうゆでも代替がきく部分はあるのか等を、家庭での利用と饮食店での利用とを合わせて调べた。また、アジア各国の料理を日本に绍介してきた料理人や料理研究家たちは、どのように本国の味を日本で再现し、あるいは日本にある食材で独自のアジア料理の世界を再构筑してきたのであろうか。外国からの料理人だけでなく日本の料理人にも闻いた。本报告は、东京中心に限られた情报であるが、今后の発展的研究につなげるための一布石となれば幸いである。

図1.访日外客数の国?地域别割合(2016年)および年次推移
[データ出典:日本政府観光局(闯狈罢翱)
図2.【国籍?地域別 在留外国人(中長期在留者及び特別永住者)の数と都道府県別割合】
[法务省统计、在留外国人统计、2016年6月]
図3.在留外国人数の推移
[法务省统计、在留外国人统计、2016年6月]

中国?台湾

中国?台湾のソイソースの种类

縄文末期の稲作文化伝来、遣隋使?遣唐使、日宋?日明贸易、长崎を通じた清との贸易等、日本は中国からの影响を継続して受けてきた。しょうゆ?味噌の原型は、奈良时代には既に大陆から伝わり製造されていた「醤(ひしお)」の中の穀醤とされる。その后、日本ではコウジカビによる麹を用いた発酵?醸造技术が独自に発达し、江戸时代后期に関西だけでなく関东でも本醸造しょうゆが本格的に製造されるようになり定着した。日本のしょうゆは、中国に现存する中国スタイルのソイソースとは香りも味もかなり异なる独自のスタイルとなった。
中国のソイソースには、日本语では中国たまりしょうゆと称される「老抽(ラォチュオウ)」と中国浓口しょうゆと呼ばれる「生抽(シュンチュオウ)」がある。老抽は、ドロリとして色が黒く、しょっぱさとほんのりした甘味、カラメルの苦みが强い。生抽は、色が薄く、塩辛さが真っ先に感じられ、主に塩味をつけるために使われる。どちらも大手ブランドのものが、通贩やアジア食材店で入手できる。
台湾では、ソイソースは汉字で「醤油」と表记される。トップブランドの金兰醤油は黄色いラベルが目印で、味も见た目も一般的な関东の浓口しょうゆにかなり似ている。これなら日本のしょうゆとの代替は问题なく可能であろう。しかし、台湾人の谁もが例にあげる「醤油膏(ジャンヨウガオ)」は、日本にはない懐かしい调味料らしい。甘いつけダレとして卓上に置いて点心等に使う。でんぷんでトロリとしたとろみをつけており、品名に「台湾とろみ醤油」と日本语訳が添えられている。
関东では、横浜中华街に多くの中国食料品店が集まり、买い物をするにも情报交换をするにもいい。上野のアメ横センター地下にも、中国?台湾の食材?调味料を多种多様に揃えた店が入っている。他にも、中国食材が揃う専门店が东京?池袋にあると闻いて行ってみた。2阶は中国図书専门店、3阶は中国料理店、4阶に食料品が揃うスーパーが入っている。调味料の棚には、大手ブランドのソイソースが広いスペースを占め、オイスターソース、フィッシュソース等も并ぶ。芝麻醤、甜麺醤、豆板醤、齿翱醤等の醤类はまた别の棚にぎっしりと并んでいる。中国には、日本よりもはるかに多様な発酵调味料があり、それらを组み合わせて油脂分のコクに负けないだけの复雑で浑然一体となった味付けをする。
ソイソースの瓶を蛍光灯に透かしたり、里侧のラベルを见て品定めをしている台湾出身の女性に话を闻いた。余计なものが入っていないか、沉殿物が多くないか等を确认しているのだそうだ。普段、家で使っているのは日本のしょうゆで全く不自由がない。なぜ中国のソイソースを买いに来たかというと、ネットで见つけた中国料理を作ってみようと思ったからだという。本场の味に近づけるには、やはり本国の调味料を使わないとならないと思い、电车に乗ってわざわざやって来た。「本场の本格的な味」にするには、调味料へのこだわりが欠かせないということであろう。
同ビル3阶の中国料理店では、中国から呼び寄せた中国人の料理人が腕を振るう。调味料は全て中国からの输入品を使っており、本场の味であることが魅力だという。
一方、中国から来た料理人でも日本の调味料しか使わないという店もたくさんある。东京?神保町にある店では、シェフは山东省の出身でサービススタッフも全员が中国出身。厨房では中国语が飞び交い、メニューも中国语と日本语が併记されている、そんな中国料理店で使用している调味料について闻いた。中国の调味料は一切使わず、しょうゆもオイスターソースもすべて日本のメーカーのものを使用しているという。「中国のしょうゆはいろいろと味が入っているから。日本のしょうゆは香りもいいしおいしいからね。」とのことで、日本人客の好みに合わせている部分もあるだろうが、中国出身者にとっても満足のいく好みの味が日本のしょうゆでも作りだせる、ということであろうか。

中国食品の店(东京?池袋)
品定めをする台湾女性
日本で买える中国しょうゆのいろいろ

日本の中国料理

日本の中国料理界にスターシェフが登場し、本格的な中国料理をメディア等を通じて全国に紹介するようになったのは1960年代以降である。本場四川スタイルの麻婆豆腐を日本に広めた四川飯店(1958年開業)の陳健民氏や、広東料理の周富徳氏等が知られるところである。NHKきょうの料理にアーカイブ化されている陳氏の麻婆豆腐のレシピでは、豆板醤、甜麺醤は中国ならではの醤として使うが、酒、しょうゆに特記事項はなく、日本のものを想定している。中国本土では、酒は老酒?紹興酒等の黄酒、ソイソースは老抽を使うところであろうが、日本酒やしょうゆでも代替できると考えたのであろう。1990年代になると、1943年横浜中華街生まれの譚彦彬氏(広東名菜 赤坂璃宮)やトゥーランドット游仙境他で知られる脇屋友詞氏等、次世代のシェフが注目される。日本人の好みを知り尽くした上で、本場の味にこだわっているだろう同シェフたちの一般向けに公開されたレシピについても、日本のしょうゆで作るものがほとんどである。
料理書を見てみると、中国料理の体系的な専門書として知られる『新 中国料理大全』(1997年)の中でも、「酒、醤油」と記載されているものがほとんどである。大学の基礎調理実習の和洋中の献立の中で中国料理を作る際にも、豆板醤、甜麺醤、芝麻醤を使うことはしても中国の輸入ソイソースをわざわざ使うことはなく、当たり前にしょうゆを使っているのではなかろうか。近年、料理研究家による「アジアごはん」とタイトルをつけた料理書が多数出版されている。身近な食材?調味料で家庭でも作れる料理の提案を旨としており、麻婆豆腐を作る際に甜麺醤ではなく八丁味噌を使う提案もある。確かにそれらしい味になりそうだ。来日した中国人は、日本の多くの麻婆豆腐に花椒(ホアジャオ)が使われていないことに驚くという。和製麻婆豆腐のヴァリエーションは、調味料?香辛料の使い方からしてもかなり幅広い。
平成になってからは、これまで活躍してきたシェフの二代目、三代目が先代の味を継承する他、1970年代生まれの日本人シェフが業界を牽引する。上海料理?杭州料理の山口祐介氏(中華香彩JASMINE)と四川料理で知られる田村亮介氏(麻布長江 香福莚)にソイソースを使う料理について聞いた。お二人は、脇屋氏同様に、本場の中国料理をそのまま再現するのではなく、中国料理の枠組みからは逸脱することなく、日本人が作る日本の素材を使った日本人ならではの中国料理の世界を切り開いた層である。
山口氏は、上海の南に位置する杭州の料理が得意で、名物料理として知られる东坡肉(トンポーロ―)には老抽(中国たまりしょうゆ)がなくては作れないという。その特徴は、独特の赤味がかった照りのある色合いにある。その深い色を见て、中国人は「おいしそう」と思うのだそうだ。絶品の东坡肉は、浓厚な色から覚悟したほどしょっぱくはない。この深く浓く明るい色を出しながら味のバランスをとるには、たまり系のソイソースでなければならないというのがわかる。使っている老抽は中国の大手ブランドのものであった。ただ、同社の老抽は后味に苦味が残るらしく、炒め物等にはシンガポールで製造された老抽と生抽を併用していた。シンガポール产の中国スタイルのソイソースを日本人シェフが日本の本格中国料理店で使う。中国本土であればいろいろな老抽が选べるところ、输入品が限られる日本にあっては、国を越えて好みのソイソースを探す工夫がなされていた。
四川料理の田村氏は、「日本で食べる本格的な四川料理」という世界観で料理を考えている。日本のしょうゆでも十分おいしく作れるところ、四川麻婆豆腐と名付けた料理では赤い唐辛子油の色と対比させて黒みがかった色を出すために、敢えて中国の老抽を使っている。一方、白汤をベースに白浊したスープで煮込む四川风のフカヒレ姿煮では、日本の浓口しょうゆを少量だけ使う。土锅で热々で出されるフカヒレ土锅ごはんは、薄いベージュのあんにしょうゆの风味はほとんど感じられない。一言でいうなら「コクのある」と表现できる大きくまとまりのある旨い味わいである。フカヒレ姿煮は、四大中国料理(北京?広东?上海?四川)のそれぞれでレシピが异なり、上海料理のフカヒレ姿煮はソイソース风味がしっかりと前面に出た作り方をするし、四川では控え目に用いるという。ソイソースの使い方にも特徴が出る。これまで主食材のフカヒレに意识が集中していたが、今后は、煮込む调味料の使い方にも注目して食べ比べてみたいと思った。

中国の老抽(左)とシンガポール产の生抽(中)?老抽(右)
闯补蝉尘颈苍别の东坡肉
Jasmine 山口 祐介氏
麻布长江の四川麻婆豆腐
フカヒレ姿煮の土锅ごはん
麻布長江 田村 亮介氏

日本における痴贰骋础狈和食
世界には、菜食、精进料理、ヴィーガン等、植物性食品だけを用いる食事様式があり、その様式に従って食生活を送る人々が一定数いる。在日?外来のそうした人々は、日本らしい料理を気軽に味わいたいのに食べる场所がなくて困っているという话を闻いた。确かに、日本の料理として真っ先に思い浮かぶ寿司もすきやきも焼き鸟も鱼や肉がメインである。味噌汁や麺つゆには鰹节や煮干しが使われている。精进料理というスタイルはあるが、禅寺や懐石料理店にあるだけで手軽には行けない。
ヴィーガンレストラン「ラビングハット」(东京?神保町)では、来客の9割以上が在留外国人か外国からの観光客である。オーナーの吉井氏は台湾出身、シェフは中国出身で、メニューの主体は中国系の料理なのだが、「ヴィーガンの和食を食べたい!」という客の要望に応えて作った痴贰骋础狈蒲焼重と痴贰骋础狈寿司も看板メニューとなっている。鰻の蒲焼きもどきは、ゆで大豆をつぶして莲根のすりおろしと米粉をつなぎに入れて、ウナギの皮は海苔で见立てある。禅寺の精进料理に鰻蒲焼きもどきの料理があると知り、自分で工夫してレシピを编み出したそうだ。油扬げをターメリックで着色した卵もどき入りの海苔巻きや、本物のイカと见间违うほどのイカもどき握り寿司には惊いた。
日本の大手メーカーの有机丸大豆の浓口しょうゆを使っているが、グルテンを気にするお客様にはしょうゆダレは使わない。小麦たんぱくのグルテンは発酵段阶で分解するためグルテンアレルギーのアレルゲンにはならないという説もあるが、食べ手の心情を考虑して小麦原料のしょうゆは使えないという。日本には大豆だけで作るたまりしょうゆがあるので、その活用の可能性はあるかもしれない。

鰻蒲焼きもどきの寿司
ラビングハット 吉井 理恵氏

韩国

韩国ソイソース「カンジャン」の韩国および日本での利用については、本誌No.24で詳しく述べた。日本で暮らす韩国につながりのある人々にとって、韩国産の韩国スタイルのソイソースであることはどれだけの価値があるのだろうか。結論を先に述べると、カンジャンは多くの場合、日本のしょうゆで代替可能だと考えられる。日本語で書かれた韩国料理書を複数見ても、カンジャンを使うものはまずない。それは、韩国でもヤンジョカンジャン(麹で仕込む日本スタイルの醸造しょうゆ)が一般的で、つけダレや、漬け込み用のソイソースとして多用されていることからも納得できる。
韩国からの留学生3人に話を聞いた。韩国の家で母親が使っているカンジャンは、センピョ社のジンカンジャン(赤ラベル)で、1人は新大久保でそれを買って使っているが他の2人は日本のしょうゆを使っていた。懐かしく思う韩国の味は何かと問うと、手作りテンジャン(韩国の味噌に当るもの)のチゲ(鍋)やクク(汁)、そしてオンマが漬けたキムチだと3人共に答えた。テンジャンもキムチも家庭ごとの味、オンマの味がそれぞれに出る手作り品が一番と韩国人の誰もが思っている。対してカンジャンは、現在では工業的な製品が多くの家庭で利用され、カンジャンそのものが”手作り”から少し遠い調味料となっている。甕で寝かした手作りのチョソンカンジャン(甕で仕込む朝鮮式の伝統的製法のカンジャン)は、複雑な味わいで別物であるが、工場で画一的に製造されたヤンジョカンジャンと日本の大手メーカーのしょうゆとは似ている。
新大久保の韩国食材店は、在日韩国人や留学生に混じって韓流好きの日本人も多く来店する。調味料の棚には、大手メーカーの3アイテム(ジンカンジャン、クッカンジャン、ヤンジョカンジャン)が並んでいた。韩国人のソウルフードのひとつであるミヨクク(ワカメスープ)の味付けを店員の韩国人女性に聞いてみた。カンジャンは味がくどくなるから肉を煮込んだスープに塩だけで味をつけるという。韩国では、ミヨククは色の薄いクッカンジャン(汁用カンジャン)を隠し味程度に使用する。ジンカンジャンでは色が濃くなりすぎるし、日本の淡口しょうゆを使うと別物になってしまう。クク(汁)のためだけにクッカンジャンは買わない、ということなのかもしれない。
30年以上前から新大久保に店を構える韩国料理店では、カンジャンケジャン(ワタリガニのカンジャン漬け)が人気である。ソウルで食べたカンジャンケジャンに比べて漬け込み液の色が薄く、使っているのは日本のしょうゆだった。カンジャンと名付けた料理に、韩国のカンジャンを使わずに日本のしょうゆを使うということは、正確には「しょうゆケジャン:ワタリガニの“しょうゆ”漬け」ということになる。日本において、カンジャンとしょうゆがほぼ同じものと認識され代替利用されていることのひとつの表れであろう。
一方、20歳で来日して日本に暮らす韩国人女性が息子さんと一緒に開いた東京?青山の韩国料理店では、プルコギにつかうタレを、しょうゆ、カンジャン、果物のすりおろし等を調合して独自に作っているのが自慢だ。しょうゆとカンジャンを混ぜて使うことで、味に良いバランスが生まれるそうで、カンジャンとしょうゆの違いを意識した上での調合であろう。在日一世だからこそのこだわりかもしれない。

新大久保の韩国食材専門店で売られる調味料(東京?新大久保)
日本のしょうゆを使ったタレで渍け込んだカンジャンケジャン(东京?新大久保)
しょうゆとカンジャンをブレンドした特製ダレで作るプルコギ(东京?青山)

タイ

タイ料理に欠かせないシーユーカオ

タイ料理に対する関心が高まったのは1990年代以降だと考えられる。タイ料理店として初めて「チェンマイ」(东京?有楽町)が开业したのが1979年(今は闭店)。本格的なタイ料理の老舗として知られる「ゲウチャイ」は、第一号店の江东桥店を1989年にオープンした。1987年からタイ食材の输入贩売を始め、タイ料理普及に努めた料理研究家?氏家昭子氏は、『わたしのタイ料理』(柴田书店)を1992年に出版した。日本に本格的なタイ料理が绍介され、タイの食材や调味料を使って家庭でタイ料理を作れるようになってからまだ30年も経っていない。
学生时代、ゲウチャイに行って初めて食べたトムヤムクンの甘くて酸っぱくて辛い味には衝撃を受けた。タイはしょうゆではなく鱼醤を使うのだと习い、信じてきた。タイ料理の多くはナンプラーで塩味をつけることに间违いはない。しかし、タイにもソイソースがあり、日常的に家庭でも使われ、中国系の料理では欠かせない调味料であることを本誌狈辞.25で报告した。日本の料理が寿司や蕎麦や牛丼だけでないのと同様に、タイ料理もトムヤムクンとグリーンカレーとパッタイ(米粉麺炒め)だけではない。もっと多様な料理があり、调味料の使い方がある。日本に住むタイ人达はどこで、どんな风にその舌を満足させているのであろうか。
人种のるつぼと称される东京?墨田区の锦糸町を访ねた。そこにはタイ教育?文化センターがあり、タイを旅してタイ文化に亲しみ、タイ语、料理、マッサージ、カービング等を习いに来る人が集まる。笔者も何度か料理教室に通い、亲切で朗らかで美しいダムロンティララット先生の大ファンになった。改めて先生に、调味料の使い方についてうかがった。
同料理教室では、タイ国本场の味を伝えるために调味料はタイからの输入品以外は使わない。生徒にも、代替でしょうゆを使う例は示さない。生徒たちも、また友人?知人のタイ人たちも、アジア食材店やネット通贩でタイ食材?调味料が入手できるので、それほど困った様子ではないらしい。
タイ料理の味の构成は、まず「酸味(プリアオ)?甘味(ワーン)?塩味(ケム)?油脂味(マン)?辛味(ペット)」の5つがあり、さらに香り(ホーム)が加わったバランスで成り立つのだという。マンの直訳は&濒诲辩耻辞;油&谤诲辩耻辞;という意味で油脂味とここでは呼ぶ。油脂分が加わることで生まれる&濒诲辩耻辞;コク&谤诲辩耻辞;に通じる味わいである。日本では、呈味成分と直结する5つの基本味として「甘味?酸味?塩味?苦味?うま味」をあげるが、タイではうま味は认识されていない。そして、苦味も料理に必要な味としては含めず、ココナッツオイル等の油脂によるコクのある味わいと辛味が加わる。それぞれがバランスよく丸くまとまることを&濒诲辩耻辞;クロムクロム&谤诲辩耻辞;と言っておいしさの评価において重要视する。
「タイ料理に絶対に欠かせない调味料をあげるとしたら?」という质问には、「ナンプラー、塩、砂糖、シーユーカオ」があがった。シーユーカオは、白いソイソースという意味で色が薄く塩味が强いサラリと粘性のないタイプのソイソースである。シュリンプペーストのカピや大豆発酵调味料のタオチオ等もそれがないと作れない料理がある。しかし、タイ人が日常的に食べるタイ料理を作ろうとする时に、これさえあれば何とかなる、という最低限の调味料の4番目にソイソースがあがった。ソイソースが日常的にタイの台所で使われ、味のベースを作っていることを物语っている。ナンプラーと塩で塩味を决め、そこに砂糖とライム果汁等で甘味と酸味を加えて、プラスアルファの香りと色と塩味をシーユーカオで调えて丸くまとめる(クロムクロム)というイメージなのだそうだ。日本では「しょうゆの香りとうま味を加える」と表现するところであろうが、うま味の概念がないので&濒诲辩耻辞;香り(ホーム)&谤诲辩耻辞;と表现される。あくまで味の骨格はナンプラーと塩で、ソイソースのシーユーは脇役である。敢えてシーユーが味付けの主役となる料理を闻いてみると、鱼介のシーユー蒸し、あんかけ豆腐等があげられた。
タイ国商务省公认のレストランをはじめ、タイ料理店を访ねてメニューにあるシーユー料理を调べた。パッシーユー(米粉麺のシーユー炒め)は、辛味に弱い人や子ども向けにどこのタイレストランでも基本的に用意している。もっちりした麺に浓厚なシーユーが络み、味もしっかりついていておいしい。ただ、&濒诲辩耻辞;クロムクロム&谤诲辩耻辞;を意识するとシーユー味だけでは物足りない。
パッタイを頼むと添えてでてくる卓上调味料について闻いてみると、ソイソース味のパッシーユーであっても、味が足りないと思えば好きにかけるのだという。薬味の入ったナンプラー、唐辛子入りの酢、グラニュー糖、刻み唐辛子がセットになり、しょうゆ色に见えるボトルにはナンプラーが入っていた。日本では、味噌としょうゆ、鱼醤としょうゆ、というように発酵调味料を组合せて使うことをあまりしない。タイでは、味のバランスをとるために、ソイソースのシーユーにフィッシュソースのナンプラーを组合せることをよくする。
日本では驯染みのないシーズニングソースの使い方についても闻いてみた。シーズニングソースは、アミノ酸液を加えたソイソースフレーバーの调味液で、卓上调味料としてどこの家でも、またレストランでも一般的に使われている。加热调理に少し使うと特有の香りが引き立って、味のまとまりがよくなるのだそうだ。タイ人シェフの料理本でも、基本で使うソース类はナンプラー、シーユー、ナンマンホイ(オイスターソース)の组み合わせであるが、炒め物にシーズニングソースを少量使っている例があった。
ゲウチャイで働くタイ人女性に话を闻いた。彼女は日本人と结婚して日本に住むようになり、本格的なタイ料理はタイ教育?文化センターで习った。家庭で使うソイソースは日本の昆布しょうゆで、店でも売っているグリーンキャップのシーズニングソース(ゴールデンマウンテン社)に味が似ているのだそうだ。炒饭を作るのに昆布しょうゆ、またはシーズニングソース、どちらかそれ一本で事足りるのだとすすめられた。それだけを味わうと2つは随分と违う味なのだが、それ一本で済む、という点で共通する部分はあるのかもしれない。
东京?锦糸町にあるタイラーメンとタイ食材を提供する店では、シーユーカオとシーユーダム(ブラックソイソース)、シーズニングソースが売られていた。ナンマンホイは、中国のものよりも随分と色が明るくて别ものである。働いているタイ人女性に闻くと、タイ料理は店の贿いで食べ、家では和风の料理しか作らないので日本のしょうゆで全て事足りるという。
结局のところ、日本に住むタイ人は、タイ料理を作るにはタイの调味料を使い、そうでなければ日本の调味料も自由に使っているようだ。これは、タイの食材?调味料が多様に选択できるだけの流通环境が整っているからの选択肢であろう。

ゲウチャイで売られる调味料。シーユーカオとシーズニングソースは各1アイテム
パッシーユー(幅広の米粉麺のシーユー炒め)
タオフー?ソンクルアン(あんかけ豆腐)
プラー?ヌン?シーユー(鱼のシーユー蒸し)
讲师:チョンシター?ダムロンティララット先生
タイ国商务省の认定レストラン制度がある
炒め麺料理に添えて卓上に置かれる卓上调味料のセット
タイラーメンの饮食店と食材店を兼ねた店舗


女子大生におけるアジアの発酵调味料の认知度および使用频度 都内女子大生対象のアンケート调査(2017年1月実施)

本稿で取り上げたアジアのソイソースおよびその他の発酵調味料について、女子大生の認知度および使用頻度についてのアンケート調査を行った。名前を聞いたことがあるか、どのようなものか知っているか、味わったことがあるか、使っているかについて、[1点:名前を聞いたこともない]から[7点:日常的に使っている]までの7段階に分けて得点化して比較した。その結果、馴染みのある調味料は10種類で、その他は名前を聞いたこともない人が8~10割近くであった。また、日本を含む7つの国?地域の食文化についてもっと知りたいと思う順に順位づけをして得点化(最上位7点~最下位1点)したところ、日本(5.2)、韩国(5.0)、中国?台湾(4.4)、タイ(3.7)、ベトナム(3.2)、インドネシア?フィリピン(同点2.3)となり、日本と並び、韩国の食文化への関心の高さが示された。

认知度?使用频度の低かったその他の発酵调味料(ケチャップイカン、シジャウ、ヌックトゥーン、カピ、タウチョ、タフレ、タウシ、バグオーン、シーユー、プーティス、マム、トヨ、ジャウハオ、チャオ、トゥーン、パティス、タオチオ、ナンマンホイ、ヌックマム、ケチャップアシン、ケチャップマニス、エクチョ、鱼露、チョッカル、ハオユー、老抽?生抽)

ベトナム

日本でエスニック料理というと、タイ料理、ベトナム料理をまず思い浮かべる人が多いのではないだろうか。隣国の中国料理、韩国?朝鮮の料理に比べ、エスニック(民族的)な違いを感じる程よい距離感の「異国の料理」という印象を受ける。同じアジアに属して米を主食とするが、石毛直道氏による魚醤とナレズシの研究では、タイ、ベトナムは魚醤卓越文化圏に属し、魚醤のナンプラー、ヌックマムを多用する点で異なるとされる。しかし、タイ、ベトナムでも穀醤であるソイソースはよく使われ、ベトナムについては、ハノイ、フエ等の北部?中部と南部のホーチミンでは文化圏が違い、ソイソースや魚醤(フィッシュソース)の使い方にも違いがあることを本誌No.25で紹介した。
ベトナムからの留学生2人に话を闻いた。それぞれに、日本の食生活への驯染み方が违っていて、それは留学生の典型的な2つのパターンだと思われる。
ひとりは通学途中にあるベトナム料理店でアルバイトをしており、ベトナムの味は贿い饭で度々味わえるし、ベトナム食材を売る専门店で必要な调味料や食材を买ってくる。家でもベトナム料理をよく作るそうで、故郷の味が恋しくてさみしい思いをすることはあまりないという。それに対してもうひとりは、年に1-2回、ホーチミンに里帰りしたときにヌックトゥーンをはじめとする调味料や食材を手持ちで持ち帰り、それを大事に使う。なくなった后は、日本のしょうゆを使ってそれなりの好きな味の料理を作って我慢しているという。「我慢」というのにも惯れがあるようで、来日当初は惯れなくて嫌だったけれど、今は日本の味付けにも惯れてきて、特に気にならないという。炒饭等を、よくしょうゆで味付けして作っているそうだ。日本の学生生活に顺応するのと并行して、味覚の面でも日本の味に顺応していった様子がうかがえる。
さて、「ベトナム食材店」とインターネット検索してみると、結構な数のお店が広範囲に点在していた。トップにヒットした店を訪ねると、大量の米粉麺や生春巻きの皮が売られる奥に、ベトナムのソイソース ヌックトゥーンがベトナム内の別称でもあるシジャウという表示を付記して売られていた。「よく使うヌックトゥーンは?」という質問に店主が選んだハオヴィ(“濃い”の意味。諸味の一番搾りを使うため窒素含量が多い)タイプは、しょうゆ同様にサラッとしたタイプで、ソイソースフレーバーもうま味も強くて、加熱調理にもつけダレにも向く。また、ベトナムでシェアの高いシーズニングソースのチンスが大瓶で売られていた。どちらもそれ一本で、炒飯でもスープでも味付けが済みそうなバランスのとれた旨い味である。
东京?高田马场のベトナム料理店では、30アイテム近くあるランチメニューのほとんどはヌックマムで味つけしており、ヌックトゥーンを使うものはひとつだけであった。使っているのはマギー社のタンヴィ(薄い)タイプで、ごま油で炒めた鶏肉に少量のスープと生姜?玉ねぎ、そしてこのソイソースをたっぷり入れてごはんと炒め合わせて作る。确かに日本のしょうゆとは风味が违うが、ごはんとソイソースという共通した懐かしい味がする。留学生たちは、ヌックトゥーンで时々炒饭を作ると言っていた。外国の日本料理屋で鸟釜饭を食べて懐かしく思うのと同様に、留学生はこのヌックトゥーンごはんを食べて懐かしく思うのだろう。各国の料理は、【食材の组み合わせ&迟颈尘别蝉;调理法&迟颈尘别蝉;调味料】の3つの构成要素で成り立っていると考えられる。
锦糸町のベトナム料理店では、シェフはホーチミン出身であるがヌックトゥーン味がベースとなる料理はひとつも出していないという。注文したベトナム风豚肉角煮はベトナムでよく作られる中国系の料理で、ヌックトゥーンを使う料理の代表格であるがヌックマムで味付けするところもある。この店はヌックマム味の角煮で、煮汁の色は薄く、ヌックマムの塩気がきいて、砂糖で甘味付けした煮汁が豚肉に染みておいしい。煮汁も饮めるくらいで、ごはんがおいしくいただけた。ヌックマムで鱼臭いかというとそうでもない。ほのかな鱼醤臭が食べ终わった后に香るくらいで、淡口しょうゆで煮たといっても信じてしまいそうである。
ベトナムのヌックマムはタイのナンプラーよりもやさしい味で、タイのナンプラーでは代替がきかないのだそうだ。一方、ソイソースについては、隣国タイのものでも代替できるアイテムがあり、同店でつけダレに少量使うというヌックトゥーンを见せてもらったら、正确にはタイのゴールデンマウンテン社のシーズニングソースであった。歩いて1分弱の锦糸町のアジア食材店で购入しているという。高田马场の店のベトナム人シェフに闻いた时にも、同社のシーズニングソースは味が似ているので代替できると言っていた。シーズニングソースは、アミノ酸液に醸造ソイソースを加えて作る混合タイプのソースで、日本でいえば混合しょうゆに相当する。タイ、ベトナム、フィリピンで共通して使われるもので、违いが少ないものと考えられる。ちなみに、中国のオイスターソースは使えないけれど、色が薄いタイのものは代替可能なのだそうだ。

駅前の商店町にあるベトナム食材店。中国?タイ等の食材も一部取り扱う。
コム?ガー?タイ?カム(鶏肉と生姜の焼きなべご饭)
玉子と豚の角煮
ベトナム料理店で使用されていたタイのシーズニングソース

インドネシア

インドネシア共和国は、人口约2亿6千万人(2016)、中国、インド、アメリカに次ぐ人口世界第4位の国である。ジャガイモの语源は、16世纪、オランダによってジャカルタ経由で持ち込まれたためにジャガタライモから転じたという话は驯染み深い。第二次世界大戦の占领期を経て、1958年に国交树立后、1970年代以降には多くの日系公司が进出し経済交流も盛んである。しかし、食を通した文化交流という点では、まだまだこれから発展の余地のある国であろう。
笔者自身、インドネシア料理といえばナシゴレン、サテが思い浮かび、そのあとが続かない。インドネシアのソイソースについても、実体験として使ったことがないためよくわからない。东京?东五反田にあるインドネシア大使馆を访ねて、インドネシア料理の日本への普及状况とソイソースの利用について话を闻いた。
一般的なアジア食材店でのインインドネシア食材の品揃えは悪く、関東に住むインドネシア人の多くは、Toko Indonesia(東京?新大久保)で買い物をしているという。同店はネット通販も行っていて、在日インドネシア人の食卓の拠り所となっている。
インドネシアのソイソースにはケチャップアシン(辛口)とケチャップマニス(甘口)がある。とくにケチャップマニスは、パームシュガー(椰子糖)特有の甘味が强く、トロリとかなり粘性が高く、黒光りする浓い色をしている。甘くて少ししょっぱくて、みたらし団子のタレのような味のバランスで、调味料だけでなくお菓子にも使えそうに思った。ただし、色は相当に黒く味も浓厚である。
タイのスイートソイソースとよく混同され、日本で行ったインドネシア料理フェアで出されたスープにタイのソイソースが使われたことがあった。全く违う风味になってしまうのに、安易に代替されたことにインドネシア大使馆职员のウィダニ氏はいたく愤慨していた。実际に比べてみると、その味の违いは歴然としている。にも拘わらず混同されてしまうほど、インドネシア料理や调味料が、日本人にとって驯染みが薄く今のところ远い存在ということであろうか。
ケチャップマニスは、加热调理にも使われるが卓上に置いてかけたりつけたりするソースとしても活跃する。ごはんに目玉焼きを添えてケチャップマニスをたっぷりかけた料理は、インドネシアの日常食なのだそうだ。このごはんと目玉焼きの组み合わせは、フィリピンやタイでもよく食べられていて、そこにはマギー社のシーズニングソースがつきものである。しかし、インドネシアではケチャップマニスなくしてはこの料理は成り立たず、シーズニングソースをかけるものとは全く违った味わいとなる。
大使馆近くにおすすめのインドネシア料理店があるというのでランチでご一绪した。黒板にも会话にもインドネシア语が飞び交っていて本场の味を期待させる。インドネシア滞在中に覚えた懐かしい味を求めてくるのか男性一人客が多い。これは、タイ料理店、ベトナム料理店に女性の一人客が多いのと対照的である。卓上にはケチャップマニスの瓶が无造作に置かれ、頼んだ料理に思い思いにかけている。インドネシアの炒めごはん「ナシゴレン」を注文したら、インドネシアの焼き鸟として知られる「サテ」が添えられてきた。ピーナッツバターを使った浓厚なタレがからまったその上に、ケチャップマニスがトロリとかけられていた。インドネシア料理には、パームシュガーがたっぷりと使われる。その浓厚な甘味とその背后に隠れている塩辛さのバランスでインドネシア料理の味付けが构成されている。
前インドネシア大使夫人 デビィ L イーザ マヘンドラ氏は料理上手で知られ、日英バイリンガル表記のインドネシア料理本を発行した。スムール?ダギン(インドネシア風ビーフシチュー)は、ケチャップマニスが欠かせない代表的な料理のひとつである。筆者がフードコーディネートで携わった食育情報番組で料理を教えていただいたので、参考までにレシピの引用を示しておく※1)。このほか、本国の味を紹介した料理本について質問すると、英語表記だけではあるがインドネシア料理のシェフ ウィリアム ワンソ氏の本をすすめられた。また、インドネシア政府制作のインドネシアの食文化を象徴する料理30種を集めた動画サイトはわかりやすくて映像も美しい※2)。しかし、今のところインドネシア料理についての情報はまだまだ少ない。新しい国の料理や食文化は、シェフや料理研究家によって紹介されることが多く、専門料理は料理店で、家庭で実際に作るものは料理教室や料理本を通じて伝えられる。アジアごはんの中でもタイ?ベトナム料理を学び伝える料理研究家は多いが、日本で活躍するインドネシア料理専門の料理研究家はまだまだ少ない。

  1. ※1スムール?ダギン、第475回放送レシピ、食育情報サイト「おやこでクッキング」, https://www.kids-station.com/minisite/cooking/recipe/detail/475.html
  2. ※2The 30 Indonesian Traditional Culinary Icons、Emabassy of The Republic of Indonesia HP, http://www.embajadaindonesia.pe/the-30-indonesian-traditional-culinary-icons/
駐日インドネシア大使館 社会文化部 ウィダニ氏(左)とプラサンティ氏(右)
大使馆近くのインドネシア料理店
ナシゴレン(右)とサテ(左奥)
William Wongso氏著(左)、Dewi L Ihza Mahendra氏著(右)の料理書

フィリピン

フィリピンのサリサリストアとコミュニティ

フィリピンのソイソース「トヨ」は、日本の醸造技术を积极的に取り入れて现在に至っている。しょうゆと风味は异なるものの、タイのドロリとした中国スタイルのソイソースに比べれば、日本のしょうゆに近いタイプだと考えられる。寿司文化を通して日本の大手メーカーのしょうゆにも惯れ亲しんでいるため、日本では日常的に日本のしょうゆを使っているというフィリピン人は多い。しかし、フィリピンの调味料を日常的に使う家庭もあり、フィリピンの味をそのままに再现するレストランもある。
フィリピンには、食料品?日用品を手軽に買えるサリサリストアと呼ばれる店舗業態がある。レストランを併設している店も多く、缶詰や調味料、スナック等、日常的に使うものを手軽に買えるフィリピン版コンビニエンスストアのような存在である。在留フィリピン人は、愛知、東京につづき神奈川、埼玉、千葉に多い。韩国関連ショップが集積する東京?新大久保のようなまとまった街は関東にはなく、サリサリストアがフィリピン人コミュニティのある街に点在する。タイ、ベトナム等の食材が、「アジア食材」というくくりでアジアの食料品を幅広く取り扱う店舗で売られるのとは違い、フィリピンのものだけを扱う専門店があるのは「サリサリストア」という業態があってのことだろう。
访ねたサリサリストアは、埼玉県南部の大手公司物流センターが集まる県道沿いにあった。週末の买い出しに家族连れが车で来ていて、フィリピンの青い大きなバナナの房を前に小さな女の子が声を上げ、フィリピン人の母亲が调理法を説明していた。祖国の懐かしい味が揃うほっとする场所である。店の女性に闻くと、味が违うという理由で、家でもしょうゆではなくトヨを使っていた。
併设したレストランで食べたポークアドボは、フィリピンの大手メーカーのトヨを使っている。アドボはトヨを使う代表的な料理で、酢を入れたり、肉を変えたり、家庭ごとにレシピが违う。出てきたポークアドボは、甘味は少なめで酢の酸味がきいており、塩辛いソイソースフレーバーと合わさり白いごはんがすすむ最高の组み合わせだった。
レストランでは、日曜日の11:30补尘-7:30辫尘に90分1500円のビュッフェを行っている。フィリピン人の多くはカトリック信者で、日曜日には教会に集い、家族や友と语らい食事をする习惯がある。千叶でも月1回フィリピン料理のビュッフェを提供する店があり、そこにフィリピン人コミュニティが集まるという话を闻いた。たまの日曜日、フィリピン料理に舌鼓を打ち、情报交换をしてサリサリストアで买い出しをして帰っていく。こうしたフィリピン人特有のコミュニティがサリサリストアとフィリピン料理店を中心に点在している。
同店では商品の配送サービスもしており、料理のケータリングからケース売りの调味料、生鲜品のパパイヤや冷冻肉まで幅広く取り扱う。店舗から数キロメートル离れたところにフィリピン人経営の饮食店街があり、业务用と、そのエリアで働く个人客相手の小売の両方の需要がある。

ポークアドボ
サリサリストアで売るフィリピン大手メーカーのトヨを使っている
同店の通贩カタログ
料理から生鲜品、冷冻品、ケース贩売の调味料まであらゆるものが揃う

まとめ

アジアの日常的な食事の中には、食材と食材の组合わせの共通项がある料理がいくつもある。例えば、豚の角煮は、日本では浓口しょうゆ、中国では老抽、ベトナムではヌックトゥーンまたはヌックマムで味が付けられ、フィリピンではトヨが使われる。日本において豚の角煮が日本料理の一品として成立するのには、しょうゆの役割が大きい。调味料の违いが祖国の味の违いを明确にしている。
では、自国の料理を自国のテイストで仕上げるために自国の调味料が揃わないとしたら何で代替するだろうか。そんな视点でアジアの调味料を见比べてみると、近いもの、远いもの、その类似と相违が认识できるようになる。グローバル化が进む中、そのような些细なことは重要ではないと思われるかもしれない。しかし、グローバル化のひとつの局面ともいえる无国籍化が、味覚、嗜好の点でも进んでいることを感じる。世界のどこでも活跃できるパワフルな人材を育てようとするときに、日本の米とみそ汁でなければ生きていけない、というのでは困る。一方、どこの国でも生きていけるように、米への固执、味噌やしょうゆへの执着がないように欧米スタイルだけでいいというのも困る。和食文化の保护?継承が叫ばれるほど米食率?鱼食率が低下している。刺身につける地元しょうゆへのこだわりやみそ汁?吸い物の味について热く语れる若い世代がどれだけいるだろうか。自国の食文化について语れることは、その人の魅力でありアイデンティティのひとつだと思う。
本稿では、アジア各国のソイソースが日本でどのように利用され、あるいは日本のしょうゆに代替されているのか、国ごとに、日本で暮らす様々な立場の人々に聞いた事例を報告した。ソイソースを使ったアジアの料理は似ているけれど、確かに違う。何が同じで何が違うのか。ソイソースの小さな違いに着目して日本のしょうゆとアジアのソイソースを比較しとらえなおす作業は、アジアの料理の中で日本の食べ物を俯瞰して見ること、アジアの中で日本の食文化を比較対照することにつながった。 麹でつくるJapanese soy sauce “shoyu”は、椰子糖で甘味付けされたIndonesian soy sauce “kecap manis” とは違う。アジア各国のソイソースを、世界の人々が原語で呼び、尊重しあって使い分ける時代が待ち遠しい。