糖心原创vlog

研究機関誌「FOOD CULTURE No.24」(若手料理人によるパネルディスカッション 「和食っていいね!」といわれたい 和食の魅力)

若手料理人によるパネルディスカッション

「和食っていいね!」と言われたい 和食の魅力

2013年11月9日(土)、东京駅前 丸ビル7Fの丸ビルホールにて、京都と东京から、旬な若手料理人にお集まりいただき、和食と四季との関わり、和食の基本、世界の食文化と日本の食文化との违い等々、和食の魅力について、存分にディスカッションしていただきました。

初めての和食づくり

柿泽 初めてつくった和食は、どんな料理でしたか。
髙桥(义) 今から 20 年ちょっと前でしょうか。大学時代は、一人暮らしだったものですから、自分で自分のために、肉じゃがをつくったのが最初の和食です。どうしたらおいしくできるかなとイメージしながら、まったくの我流でつくっていましたね。
髙桥(拓) 大学出て 22 歳でデビューです。それまで料理をつくったことが全くなくて、東京の修業先で初めてつくりました。賄い飯ですね。残念ながら、メニューは忘れました(笑)。
髙桥(拓)氏

中东 小学校の时、父亲に天ぷらをつくったのが最初です。その香りに父が「おいしそうやな」と、ところが皿の上の天ぷらを见たとたんに「これは食べられへんな」と。衣が全然カリカリにならなかったんです。
柳原 小学生の时でしょうか。初めてつくった料理は、鯛茶渍けでした。胡麻を擂るというのが、僕の小さい顷のお手伝いだったんです。鯛を包丁で切るのは母で、胡麻を自分で擂って、しょうゆを入れて、中に鯛を入れて、自分でだしをひいてかけて食べたのが、僕が初めてつくった和食です。

和食の魅力

柿泽 皆さん、和食の魅力って、何でしょうか。
髙桥(拓) 母がまな板の上で、とんとん刻んでいる音や、だしの香りがしていたな、とか。私は、そういう子供の顷の记忆と结びついています。それらの味や香りで、家族をつないでいたのが和食ですね。料理の世界ではよく、「一子相伝」と言いますが、人を通して、家族を通して、代々同じ味わいを伝えることができるのが、和食の魅力ではないでしょうか。
髙桥(义) やはり季节を感じられる、というのが魅力ですね。和食には、四季を通じて何かしら常にメッセージがあると思うんです。例えば、5月になったら、ちまき、柏饼を食べる。昔から続いていて、现代も口にしているものですよね。それって、昔の人とつながっているということ。季节を通じて昔とつながってる、それが和食の魅力だと思います。
髙桥(拓) そうですね、やはり四季です。京都限定かもしれませんが、6 月 30 日に、近所のお菓子屋さんから、水無月(みなづき)が毎年届くんです。それで翌日の 7 月1日に、お返しに鱧寿司を持って行く。というようなことが自然にやりとりできるって、いいですね。
柳原 地产地消ではないですが、和食は食材も日本のもので、全部済ませることができる。そして和食ならではの调味料を使ってできる料理なんですね。本当は、一番身近じゃないといけないんですが、今は世界中の料理が食べられるので、いろいろな选択肢があります。日本人が自分たちのアイデンティティを持って食べることのできる、それこそ和食の魅力だと思います。
中东 私も、やはり季节感だと思います。たまに、海外で仕事させていただいているんですけれど、その时に感じるのは、日本以外の国の料理は、季节感というよりも旬。その旬の表现の仕方が、皿の上の食物だけ、というのが多いですね。でも、私のお店でいえば、器、掛け轴、花といった、しつらえ全般を通して季节感を表现する、五感で感じながら。それが和食の楽しみ方、魅力だと思うんです。さらに言うと、どんな器にしようか、どんな掛け轴にしようか。そういう事を考えるのは、大変なのですが、それが楽しみに変わっていけば、今の生活自体が、もっと楽しく変わっていくのではないでしょうか。
髙桥(拓)氏


人気のおかず、肉じゃがのつくり方
髙橋 義弘氏 ~肉じゃが~

じゃがいもの皮をむいて切ったら水につけてください。次に、にんじんは乱切りに。玉ねぎは、くし型に切ります。牛肉から、じゃがいも、にんじんを入れて炒めたら、全体が浸る位の水を入れて。酒も忘れずに。沸腾したら、アクを取って。玉ねぎは、少し时间差をつけて炊いていきます。さらに、水にさらした白たきを入れます。味つけは、砂糖、しょうゆ、みりんで味をととのえて、できあがり。肉じゃがは、食材の味を引き出しながら、少しの调味料で味がぐんと広がる、低カロリーでヘルシーな料理ですね。

外国から见た和食

柿泽 今、海外の话が出ましたが、外国から见た时に、和食というのは、どう评価されているのでしょうか。
髙桥(拓) 海外の料理は、油脂分、糖分を中心とした食文化なんですが、和食はまずはだし、いわゆるうま味成分がべースになっています。今、海外の料理も、まず食材のうま味を抽出して、それから全体的なバランスを取っていこうという方向に変わりつつありますね。ですから、軽く仕上がってきますし、脂もできるだけ少なく、というように変わってきています。それから、ここ10 年位で目覚ましいのが魚の品質が良くなっているということ。これこそ、和食の影響に他ならないと思うんです。釣った後や、網で獲った後の処理がいいと、おいしい料理ができる、ということへの理解が深まってきたんですね。塩を少なく、脂も少なく、香りづけも少なく、それでもって素材のうま味成分を引き出してつくっていこうという方向に変わっているように思います。
柳原 2012 年、イスラエルに、すしマスターズコンテストの審査委員長として参加したんです。びっくりしたんですが、首都テルアビブの町には、300 軒以上もの寿司を出すレストランがあるんですね。今回 3 回目なんですが、初めて優勝者が、イスラエル人だったんです。しかも弱冠 26 歳。寿司のつくり方は、どうやって勉強したの?と聞いたら、YouTube で動画を見て、研究したと。とてもきれいな寿司をつくるんですね。さらに、次のステップに上がっているような気がしました。もっと、もっと知りたい、本当の和食のことを知りたい。そういったエネルギッシュな若者が世界中で増えてきている、というのをひしひしと感じましたね。
柳原氏

中东 最近よく香港に行くんですけど、日本料理は一番高いクラスの料理と捉えられていて、すごく高いんです。例えばキンキという魚、その丸焼きが日本円で1 本 3 万円位。高級居酒屋で、それがじゃんじゃん注文されるんです。そんな風に、今は和食がちょっと誤解されている気がするんですが、近い将来、私たちがつくっている日本料理も理解されていくと願っています。それと、少し前、スペインのバルセロナにも行ってきました。魚の鮮度がとてもいい。今まではスペインでは、生の魚介類が食べられなかったんです。それがエビなど甲殻類も生で食べられるようになっていました。生け簀もありますし。それらは、日本料理の影響だと思いますね。もう一つ、面白いなと思ったのが、和食で使う発酵調味料の高い評価です。我々にとって当たり前なのですが、味噌やみりんに漬けた肉が、普段彼らがやっているような熟成(エイジング)をしなくても、瞬時にうま味が増えておいしくなるって、びっくりしてましたね。
髙桥(义) 私も海外にはいろいろ行きますが、改めて実感したのが、日本料理は水の料理だということ。フランス料理は、脂が多くて、油脂分の料理。中华でしたら火を多く使うので火の料理。日本は世界でもまれにみる软水なので、おいしいだしがひける水、というのが背景にある。そういう意味で、外国では日本料理、和食というものに、憧れみたいなものを持っている人がとても多いですね。

旬の食材を使った、手軽な一品
中东 久人氏 ~きのこのあんかけ豆腐~

秋といえばきのこですね。きのこは繊維が縦に走っているので、包丁で切るのではなく手で割いてください。豆腐は、軽く水気を取ってから、素揚げします。豆腐は揚げることによって、ガツンとしたうま味が感じられますね。きのこの風味を味わいたいので、なるべく少ないだしを入れます。例えば「この舞茸いい香りがするな」と思ったら、逃がさないために、どんな調理方法がいいのか、それを考えることが和食のコツですね。味つけはみりんとしょうゆだけ。火を止め水溶き片栗粉を入れて、もう一度火にかけ、ささみを加えればあんかけのできあがり。揚げ豆腐の上にたっぷりとかけ 、刻みゆずもさっとのせれば、完成です。

四季を感じる时

柿泽 普段、私たちが四季を感じるというと、カレンダーですが、皆さんは、どうやって感じていますか。
中东 私にとって四季というのは、お客様に「おもてなし」を表现するための、一つのお题だと思っています。例えば、毎日山に入っても、一日として、同じ状况ってないんですね。だから自ずと、お客様にお出しする料理に対する意识も日々変わっていくんです。山の中で见たこと、触れたこと、感じた匂いなどをキャッチすることこそが、私にとって真の暦だと认识してます。别にそれが食材ではなくても、花でもいいと。それを见て、感じる、その物自体が一番美しい时期こそ、私はそれが旬だと思います。
柳原 私は、筑地の河岸がカレンダーです。例えば、寒くなってくると赤い鱼が増えてきたなあ、とか。あとは五节句ですね。その时期ならではの料理。今は、そういう习惯がおざなりになっていますから、昔から伝わる行事をもっと大切にしたいですね。それを今の亲の世代が守ることで、子供たちにも伝わる。季节の移ろいを感じながら生きる。それも日本の大きな文化の一つですからね。
髙桥(义) 旬は期間に幅があるんですね。食材によっても違いますが、旬の中でも、出たては「走り」、さらに魚だったら脂がのっておいしい「盛り」、その後に、少し脂も抜けて香りも抜ける「名残り」。一つの食材においても、三段階の旬があるんです。それらと向き合うことで、四季の流れを感じますね。例えば、京料理で「鱧松(はもまつ)」というのがあるんですが、鱧は7月が旬。その時期は、脂が乗っていておいしい。でも、「鱧松」は、10 月に食べるんですね。10 月は松茸が盛りですよね。盛りの松茸と、名残りの鱧を合わせる。その組み合わせで、時の流れを感じる、味わう。そういったことができるのも和食の魅力だと思います。
柿泽 普通の人たちが、和食を通して四季を感じたいという时には、どうしたらいいでしょうか。
髙桥(拓) スーパーやデパートに行って、先週見たことのない食材があったら、それが「走り」です。その食材の売場が大きくなってきたら「盛り」です。売り場が一番大きい時、旬のど真ん中が一番おいしいですからね。魚、野菜ともに日本は多様な品種があります。魚なら 300 種類、野菜は 170 種類弱。それらを組み合わせて、料理をするだけでも、和食づくりのバリエーションはぐんと広がりますよね。
柳原 料理の言叶で「出会いもの」という言叶があるんですが、旬の食材同士は相性がいいものが多いんですよ。笋と木の芽、笋とわかめ、みんな旬の组み合わせです。「出会いもの」を探す。それも和食の楽しみ方であり、季节の感じ方ですね。
髙桥(义) 例えば 11月ですと、松茸は終わっています。時期的には、野菜は端境期なんですね。これといったものがない。強いてあげると、小かぶかな。うちのお店では瀬戸内産の穴子と小かぶを合わせる。炊いた小かぶの上に蒸した穴子を器に盛りつけて、お客様には、小かぶと穴子を一緒に口に入れてください、と。小かぶのあっさりした味わいと、穴子の油脂分が絡むことによって、とてもおいしいんです。

おいしいご饭を炊く、ということ

柿泽 和食には、欠かせない白いご饭、その大切さを教えてください。
柳原 私がやっている料理教室に入って来た方には、最初に必ずご饭を羽釜で炊いてもらいます。そこで学んでほしいことは、电気に頼らず、ガス火で自分で炊いていくことや煮炊きのタイミング。和食の主食はご饭です。ご饭がおいしければ、おかずも进む。実は、今の和食がこのようなスタイルになったのは约200年前。それほど昔からではないんです。そんな中で、今食べられている料理、肉じゃがやカレーもそうですね、それらは全部ご饭に合う。ご饭がおいしいと、何よりホッとします。それが私たちの心にある、白いご饭だと思いますね。
髙桥(义) 私も文化釜で炊いたり、土锅で炊いたり、いろいろな方法で炊いています。稲作文化を长く続けている日本人ですから、お米には神圣なもの、という思いがありますし、白というのは、神様に通じるものがある。歴史の中で、切っても切れない食材ですね。土锅、文化釜、それぞれ炊き方が违うんですけど、道具が违う中で调理をするというのは、大事なこと。自分で、何度も同じ动作を繰り返しながら、おいしいご饭を炊く、そういう感覚を养っていただければうれしいと思います。
髙桥(义)氏

柳原 よくご飯の炊き方として、「赤子泣いてもフタ取るな」というのが一人歩きしていますが、本来は、「初めちょろちょろ、中ぱっぱ、ぶつぶついう頃火を引いて、最後に藁ひとつかみくべ、赤子泣いてもふた取るな」なんですね。つまり、時系列。最初は、かまどの上に釜を置いて、火をくべると温度が上がっていきます。中ぱっぱは、火が一番大きくなっている状態、さらにぶつぶついう頃は、炊いている途中、お米の表面がぶつぶつとなるんです。その状態になったら、火を抜いちゃうんです。そして後は、かまどの余熱で火が入っていく弱火にする工程です。最後に藁ひとつかみを入れることで、余熱に火がついて、藁がぼおっと燃える。最後の10秒間火を強くする工程です。最後、赤子泣いてもふた取るな、が 10 分間の蒸らし、なんですね。その蒸らすところで、ふたを開けてしまうと、急激に温度が下がってしまって、お米の周りに水分がついてしまうんです。最後の大切な部分「ふた取るな」が、ご飯を炊く全体のルールだと間違って、今に伝わってしまったのです。

和食づくりの基本

柿泽 ご饭を炊くことは、和食の基本中の基本ですが、他にどんなことがありますか。
柿泽氏

髙桥(拓) 白いご饭は、例えば鱼を塩辛く焼いてしまっても、口の中にたくさん入れることで、塩分调节ができる。味を均一化させて、自分の好みの味に持ってこれるというのが、ご饭の特徴だと思うんですね。白いご饭には、自然な甘さがあります。よく噛むことでブドウ糖に変わりますから。大事なのは、自然な甘さが味わえる、ということかな。
髙桥(义) だしをひくことですね。ここにいるパネリストの4人ともだしが违うんですよ。よく料理教室を开催した时など、「ご家庭、それぞれで、皆さんのだしをひいてください」と言います。だしは、何と何でひかなきゃいけないというルールはないんですね。基本には、昆布と鰹节の组み合わせがあるんですけど、絶対に鰹节である必要もない。私の店では鮪节です。いりこだしもあります。种类の异なる削り节を2、3种类混ぜたり。自分オリジナルのだしがひけると、和食がもっと楽しくなるんじゃないでしょうか。
柳原 和食は、発酵调味料の文化でもあるんですね。海外の料理は、脂と香辛料で味をつけていく。皆さんがご家庭で使う调味料を思い浮かべてください。しょうゆ、みりん、味噌、酒、みんな発酵による、いわゆる微生物の力でつくられた调味料なんですね。和食づくりの基本としてまずは、そういった発酵调味料を揃えること。その调味料があるから、私たち料理人もマジックができるわけです。手品はタネがあるからできるんです。そういった调味料の扱いを覚えることが、和食の基本だと思いますね。
柿泽 日本の调味料、世界ではどのように见られているんでしょうか。
髙桥(义) しょうゆ、みりん、味噌、酒、それらの调味料って、海外にはないんですね。日本料理ってそういう调味料があるので得やなと、海外のシェフに言われたことがあります。
髙桥(拓) 简単な话、しょうゆでつくったら、何でもおいしくなる(笑)。以前やったことがあるのですが、しょうゆを自分でつくろうと思ったら、すごい労力と时间がかかるんです。香り成分を出すために、いろいろな野菜を焼いて、さらに、しょうゆのうまみ成分を出すためにかぶ、にんじん、大根、ねぎとかバニラビーンズや、鱼の骨を焦がしたものを煮詰めていくと、しょうゆに近いものができるんです。そこまでいきつくのに10时间位かかりました。そんなに顽张ったのに、市贩のしょうゆの方がおいしいんです(笑)。しかし、海外のシェフは常にそういうことをやっている。いわゆるソースですね。肉を炒めて、野菜を炒めて、それらを水の中に入れ煮詰めていって、焦がしながらソースをつくっていくんです。それが、日本では、しょうゆがすぐ手に入る。和食づくりって実は简単なんです。
柳原 和食は简単という话ですが、最低限の知识はやはり必要だと思います。例えば、和食づくりには霜降りとか、汤がくとか、水を使った下処理が多いんですね。そういった基本的なことから、次に调味料の使い方を覚える。海外のスパイスだったら何百种类の中から组み合わせないとならない。もっと复雑なわけですね。そういったことからすると、和食づくりって简単だと思います。
髙桥(义) 私は、元々、だしをひくという行為自体がインスタントだと思っているんです。もちろん粒のじゃなくて(笑)。その前の工程、鰹节をつくるのにも相当时间がかかってますし、昆布も収穫して、すぐ使えるわけではなく、干したものを一年、二年と寝かして、我々の元に届くわけです。そういうことを考えると、调味料もつくるのに时间がかかってます。自分の手元に届く前の过程で相当仕込まれてる、そういうものの组み合わせで简単にできる、それが和食という感覚がありますね。昆布を入れてから鰹节を入れて、というだしのひき方もあれば、前夜に昆布も鰹もお锅に入れておいて、翌朝火にかけて煮立ったら漉すというやり方も。いろんなだしで料理も変わってくるので、自分の好みを见つけることが、简単に楽しくできることにつながるんじゃないかと思います。
中东 便利なことに、日本には、甘味、辛味、塩味など味覚に合わせた调味料がある。それらが身近にあるということは、调理が简単にできるということなんです。それと、だしですね。それぞれ皆さんの生活サイクルが违うと思うので、无理して毎朝ではなく、时间がある时に取っておく。多くのおいしい食材が日本にはあって、それを组み合わせて、味覚に応じて调味料をちょいちょいと入れたら、おいしいものができると考えれば、とっても和食は简単ではないでしょうか。
髙桥(拓) 简単に和食をつくる基本は、しょうゆとみりんを同じ量入れる、そこから始めてもらえば。もっと甘いのが欲しかったら、みりんや砂糖を足す。塩分が欲しかったら、さらにしょうゆ、塩を加える。それだけです。それが、私が料理を始めた时に先辈から教わったことです。もっと言うと、味にふくらみがないなと思ったら、酒を入れなさいと。そこから始めて、后は、家庭の味、自分の味をどうつくっていくかということになると思います。

和食に欠かせない、ご饭の炊き方のコツ
柳原 尚之氏 ~ご飯の炊き方~

まず大切なことは、お米を洗うのではなく磨ぐということ。一度水で流したらすぐに、水をきってください。水につけっぱなしにすると、ぬかの匂いがお米に移ってしまうので。次に、磨いだお米を水につけます。実は、鍋を使ってガス火でご飯を炊く時は、途中でふたを取ってもいいんです。強火にかけ、ぼこぼこと吹いてきたら 、火を中火にして 。しばらくすると、音が静かになります 。ふたを開けてみると、お米の上でぶつぶつという状態になっているはずです。今度は弱火にして 、静かにふたをしめてください。中から、乾いた音が聞こえますか?パチパチパチ、この音が合図です。さあ、そのまま強火で10秒間。消したら、最後は蒸らし10分間。この時は絶対にふたを開けないでください。できあがったら、上下を返して水分を均質にすると、よりおいしくなりますね。

おいしい味噌汁をつくるコツ

柿泽 和食には欠かせない、味噌汁をおいしくつくるコツは何でしょうか。
髙桥(拓) 手早くやることですね。わが家は小さな子供がおりますので、献立全部を 1 時間でつくります。お米を磨いで炊いて、だしを取ってという流れができています。夕方 5 時から始めて 6 時にはご飯を食べます。家庭では、だしも、いちいちペーパータオルで漉しません。昆布、鰹節ともに煮立たせておいて、だしのエキスを全部出してしまいます。味噌汁以外に、煮炊きをするのにも、それが併用できます。夕食をつくっている時も、横から子供が宿題わからないよ、という話が出てくるわけです。そういうことにも対応できるやり方ということですね。
髙桥(拓)氏"

柿泽 「だしを取る」、というのと、「だしをひく」、というのは违う、とよくおっしゃっていますが。
髙桥(拓) 料理屋の仕事は、「だしをひく」と言います。湯の温度を 60 ~ 70°に保ち、一時間位かけて昆布のエキスのおいしいところだけを取って、ひき上げます。そして沸騰直前に鰹節を投入して、瞬時にエキスが出ますから、またすぐにひき上げるということです。そういう「ひく」という動作から、料理屋の場合は、「だしをひく」、なんですね。家庭では、だしは取りきる。ですから、「だしを取る」なんですね。
柿泽 おいしい味噌汁について教えてください。
中东 わが家は、いりこだしですね。鰹节は燻製にしているので、どうしても燻香がするんです。それが味噌の风味を邪魔すると思うんです。いりこの头を取って、水を张ったお锅に一晩渍けて、翌朝沸かして、アクを取って、味噌汁をつくります。いりこは、砂糖系の甘味ではなくて、うま味系の甘さ、というものを感じられるんです。朝の味噌汁として、のどごしがいいので、おすすめします。
髙桥(义) 私は季节で味噌を変えますね。冬场の京都は寒く、エネルギーが必要なので、浓いめのとろっとした白味噌を使います。反対に、夏场の京都はすごく暑い。ですから、赤だしを饮むんですね。それらの境の时期、春や秋口は、赤白のブレンドです。合わせ味噌にしてつくります。夏は赤かったのが、ちょっとずつ白味噌を混ぜて、だんだん白の割合が多くなっていって、おいしいなと感じるのが冬。寒さといっしょに白味噌の味噌汁を饮むと、ほっこりするんです。夏は、汗をたくさんかいて、塩分も必要なので、やっぱり赤だしですね。
髙桥(义)氏"

柳原 僕は、仙台味噌のような、香りの高い味噌が好きですね。仙台味噌や信州味噌のような、つくりたての香り。味噌汁は香りが一番大切ですから。だしの中に味噌を溶いて、好みの叶っぱを入れて饮む。长く煮ることによって、おいしさが出てきます。时々、仙台味噌と信州味噌を合わせてみたり。そういうことで、味噌汁一つとっても、いろいろな楽しみ方があると思いますね。

家庭でできる、おいしい味噌汁
髙橋 拓児氏 ~青ねぎと桜エビの味噌汁~

わが家でやっている、だしの取り方から。汤の中に、昆布と鰹节を一绪に入れます。2つのエキスを全部、水の中に溶け出させて、それを漉して使うのです。次にアクをすくって、酒を入れます。この酒が、鰹节の生臭さ、昆布の磯臭さを飞ばしてくれるんですね。煮出す时の火加减は、锅の中でゆっくり鰹节が回転するくらい。だし汁に味噌を溶き入れます。具の青ねぎは、必ず水で洗ってから切ること。そうすることで畑にあったみずみずしいねぎに戻るんですね。味噌汁が沸き加减の时に青ねぎをたっぷり入れて。桜エビは、フライパンで炒って、香りがしてきたら火を止めて、お椀に味噌汁を注ぎ、エビと刻みゆずをのせてできあがり。

和食をもっと身近に感じてもらうには

柿泽 和食をもっともっと、ご家庭で身近に楽しんでほしいと思うのですが、どんな心がけが必要でしょうか。
髙桥(拓) 例えば、自分の服や鞄や靴などは、こだわって色を合わせたりします。だけど、和食づくりとなると、あまりこだわらない。料理をつくるのも、ファッションと同じだと思うんです。今日はこの食材と、あの食材を合わせてみようじゃないかと。そういう风に、ファッション的に考えていただくというのも、和食を身近にする一つの方法だと思うんです。器は、アクセサリーと同じですから、自分の好みで食卓の幅を広げることができる。自分ならではの食の文化をつくるといいますか、それらを考えることが、和食をもっと身近にする秘诀だと思います。色目も大事で合わせの美学があるんです。色の叁原色、赤と緑と黄色は、和食においては絶対的にきれいに见える色。その后ろに、白と黒、もしくは茶色。冬场は根菜类が多いですから、白と茶色を组み合わせてみる。秋は红叶の季节、赤を中心にして、木々の茶色を合わせるとか、黄色をその上にのせてみるというのもいいですね。夏は緑、春はパステル调。それら季节の色を上手に料理に取り入れて、自分なりのコーディネートを楽しむといいですね。
中东 和食づくりを、趣味として捉えていただくといいと思います。何事も楽しくないと続きませんよね。料理をする上で、何が面倒くさいかというと、使いたい时にそれがそばに无い、ということなんです。无いから买わないと、无いからつくらなあかんと。すると、ますます面倒くさくなって、やめとこか、となってしまうのですね(笑)。ですから、例えば、二番だしを取ったら、瓶に入れて冷蔵库に入れておくとか。味噌は、白味噌、赤味噌、田舎味噌、それから他の调味料もあらかじめ买い置きしておくとか。それらがあれば、日々変化させながら、自分なりの和食づくりが楽しめると思います。
髙桥(义) 何かしらお気に入りのものを见つけるというのが、身近に感じる秘诀かなあと。食材でもいいし、调理道具でもいいと思います。お気に入りのおろし金、包丁、何でもいいです。自分のお気に入りの调理アイテムを一つ持っていると、ちゃんと手入れもするわけですよ。大事に使ったりもする。私もそうですけど、锅もグニャグニャになるまで使うんですけど、フライパンひとつでもテフロンじゃなくて、鉄のフライパンを使うとおいしいですし。たった一つ道具を替えるだけで、料理の作业が変わっていくんですね。そういう感覚を养ってもらうともっと身近に感じてくるのではないでしょうか。
柳原 僕も楽しむということが一番大切だと思います。つくる侧としては、常に食べておいしいと言ってくれることを期待しているんですね。「おいしい」その一言で、今までの努力が报われるという感じがするんですけど、そもそもつくる人が楽しまなきゃいけないと思うんですね。色を楽しむとか道具を楽しむ。とにかくつくる过程でうきうきする気持ちがあることが大切。特に主妇の方は、料理人がやっている全部をやるわけですね。食卓の総合プロデューサーであるわけです。自分で买い物行って、献立考えて、调理して、つくって、食べて、洗い物をして、それら一つ一つの过程の中に楽しみを见つけて、やっていくと、和食づくりをもっと身近に感じていただけるのではないでしょうか。
柳原氏

お気に入りの调理道具は

柿泽 日々さまざまな料理をつくると思うのですが、お気に入りの道具アイテムというのはありますか。
髙桥(拓) 祖父が使っていた、手つきの锅です。取っ手は木なので、新しいものになってるんですけど、锅自体が薄くなっているんですね。しかも、穴が开いてしまって。それを板金屋さんに行って、穴をふさいで今でも使っているんです。その锅をたまに使うことがありますが、祖父が生きていた时のことを思い出します。その当时食べていたものを、その锅でつくると、おいしく感じる。例えば、鱧の头だけを、しょうゆと酒だけで炊くんですね。それをよく祖父が炊いていたので、今でも同じものを、その锅で炊くと当时の记忆がよみがえるんです。
中东 うちにはそんな古い锅はなくて。私は古くなったらすぐに捨ててしまう(笑)。ありきたりなんですが、セラミックの包丁が大好きです。私の料理は野菜でもアクの强いものを切ることが多いので重宝しています。その包丁を使うと食材に负担がなく、食材に化学変化が移らない、ということもあり気に入ってます。もし自分の近くにその包丁がなかったら、とにかく探す。违う包丁は絶対に使わない。それ位、その包丁は自分の仕事の中でベストパートナーです。
中东氏

髙桥(义) 普段から、お店で使っているものなんですが、塩振り水嚢(すいのう)というのがありまして、それがお気に入りアイテムです。店で使っている塩というのは、ミネラル分が豊富なもので、しっとりしています。だから、なかなか细かい状态で食材にふりかけることができない。そこで重宝するのが、その水嚢なんです。目が细かすぎても塩が落ちない、适度に粗くないと落ちない。それを调整してもらって、わざわざオリジナルの塩振り用の水嚢をつくってもらってるんです。とにかく気に入っているので、それで塩を振るのが楽しい。それと、きょうは湿気が多いなとか、乾燥してるな、というのが、それで分かるんですよ。
柳原 お気に入りのアイテム、僕は晒(さらし)です。とにかく万能ですよね。だしをひく时、まな板をふく时、大根おろしの水気を绞る时、袋缝いにして、あんこを漉す时とか????。うちでは一反买って、好みの长さに切って使っています。日本の家庭にも、再び戻ってきて欲しい、そんな调理道具のひとつだと思いますね。
柿泽 ありがとうございました。

4 人の料理人の方たちが、各々の和食への思いを語っていただいた、あっという間の 2 時間でした。語りつくすには、まだまだ足りなかったかもしれません。それでも、和食と季節との関わり、もっと和食を身近に感じられる工夫、海外の食に与えた和食の影響等々、さまざまな角度から多くの和食の魅力をお聞きすることができました。