研究機関誌「FOOD CULTURE No.24」アジアのソイソース 『韩国におけるカンジャンの利用』
アジアのソイソース 『韩国におけるカンジャンの利用』

2013年12月5日、ユネスコの无形文化遗产に韩国の「キムジャン:キムチの製造と分配」と日本の「和食;日本人の伝统的な食文化」が同时に登録された。2015年日韩修好50周年を迎える両国にとって、今后の文化交流は益々活発化していくだろう。日本での韩流ブームは久しく続き、若者から熟年层まで多くの人々が日常的に韩流ドラマ、碍-辫辞辫に亲しんでいる。韩国料理を楽しむ机会も増え、韩国を访问して本场の味を堪能することも容易である。
そうした中、韩国と日本では非常に多くの食材が共通して使われていることに気づく。市场で见かける生鲜食材はもとより、鱼の干物や昆布、煮干しも、秋の味覚として店头に并ぶ干し柿も非常に似ている、あるいは全く同じであることに惊いた。外国に出かけて懐かしくなる家庭の味はテンジャンスープ(味噌汁)だというし、韩国でもどじょう锅には山椒をふる。日本ならではのものだと思っていたものが当たり前に韩国でも食べられ、韩国の人々はそれを自国の独自の食文化と认识していることに最初は戸惑った。日本の香りの代名词ともいえる柚子驰耻锄耻は、韩国では驰耻锄补茶として亲しまれ、非常に韩国らしい食品として认识されている。
もちろん同じ食材でも、组み合わせる香辛料や调理法、食べ方によって异なるものとなる。韩国料理と和食、それぞれの食文化は共通する部分も多いが、异なる部分もまた多い。はたして何が同じで何が违うのか?そんな素朴な疑问から、韩国の醤油、いや韩国のカンジャン探しの旅が始まった。
韩国料理では、伝统的な调味料として大豆を加工した穀醤を主に使う。韩国料理用语辞典(郑银淑着、日本経済新闻社)によると、「ジャン(醤)」は大豆を発酵させて作った调味料の総称で、调味料として使われるジャンにはカンジャン(醤油)、テンジャン(味噌)、コチュジャン(トウガラシ味噌)、チョングクジャン(清麹醤)などがあるという。赤唐辛子で真っ赤に风味づけされたコチュジャンは韩国ならではの调味料であり、チョングクジャンは纳豆に似た风味を持つが调味料として使用される点で纳豆とは异なる。テンジャンと味噌にも风味、製法に违いがあり、正确にはカンジャンと醤油は异なるものと考えられる。
日本では、醤油は日本の調味料であり、その英訳であるsoy sauceもまた日本のものだと考える人が多い。しかし、中国、台湾、韓国、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどのアジア各国でsoy sauceは作られ、それぞれの風味と味わい、原料、製法には違いがある。本小論では、韓国のsoy sauceをカンジャンGanjangと表記し、一部日本語訳として醤油という言葉を用いることとする。
1.韩国のカンジャンの分类
韩国にどのようなカンジャンがあるのかを现地で问うと実に様々な名称が出てくる。最初は混乱したが丁寧に闻き取りをしていくと少しずつわかってきた。集约すると、使い方としては浓口タイプとスープ用のうす口タイプに分かれ、作り方としては伝统的な自家製のものか工业的に大量生产された市贩製品かに分かれる。それぞれに复数のカンジャンが存在し、あるものは同义でありながら人によって呼び名がかわり、あるものは同じ呼び名であっても自家製か工业製品かで全く味わいが异なるものもある。以下に、その种类と定义を示す。
| カタカナ表记(アルファベット表记) | 日本语訳例 | 主な定义 | |
|---|---|---|---|
| ① | ヤンジョ?カンジャン(Yangjo Ganjang) | 醸造醤油 | 大豆、脱脂大豆、小麦等を原料にした麹(こうじ)により醸造された醤油 |
| ② | ホナプ?カンジャン(Honhab Ganjang) | 混合醤油 | ①と③を适正な比率で混合して加工した醤油 |
| ③ | サンブネ?カンジャン(Sanbunhae Ganjang) | 酸分解醤油 | タンパク质や炭水化物を含有した原料を酸で加水分解して加工する醤油 |
| ④ | ヒョソブネ?カンジャン(Hyosobunhae Ganjang) | 酵素分解醤油 | タンパク质や炭水化物を含有した原料を酵素で加水分解して加工する醤油 |
| ⑤ | ハンシク?カンジャン(Hansik Ganjang) | 韩式醤油 | 主原料のメジュを塩水と混ぜて発酵、熟成した醤油 |
| カタカナ表记(アルファベット表记) | 日本语訳例 | 主な定义 | |
|---|---|---|---|
| 家ごとに手作りされるカンジャン | |||
| ⑥ | チプ?カンジャン(Jib Ganjang) | 家醤油 | 自家製の手作り醤油という意味。⑦朝鲜醤油、⑧在来式醤油と同义。 |
| ⑦ | チョソン?カンジャン(Chosun Ganjang) | 朝鲜醤油 | メジュと塩水を瓮に仕込む伝统的な在来式の作り方をした醤油 |
| ⑧ | チェレシッ?カンジャン(Jaelaesig Ganjang) | 在来式醤油 | ⑥家醤油、⑦朝鲜醤油と同義 |
| ⑨ | チョンジャン(颁丑耻苍驳-箩补苍驳) | 清醤 | 在来式製法で熟成期间が短く1~2年の色の薄い醤油 |
| ⑩ | チュン?カンジャン(Joong Ganjang) | 中醤油 | 在来式製法で熟成期间が清醤と阵醤油の中间的(3~4年)な醤油 |
| ? | ジン?カンジャン(Jin Ganjang) | 阵醤油(眞醤油) | 在来式製法で熟成期间が长く5年以上の色の浓い醤油 |
| 工场で製造される醤油 | |||
| ? | ジン?カンジャン(Jin Ganjang) | 阵醤油 | ②混合醤油の一种で浓口タイプ。?と同じ名称のため混同されやすい。 |
| ① | ヤンジョ?カンジャン(Yangjo Ganjang) | 醸造醤油 | 大豆、脱脂大豆、小麦等を原料にした麹(こうじ)により醸造された醤油 |
| ? | クッ?カンジャン(Guk Ganjang) | 汁醤油 | スープ用として調製されたうす口タイプ。②混合醤油タイプと⑦朝鲜醤油の改良式製法によるプレミアムタイプがある。 |
| ? | チョリム?カンジャン(Jorim Ganjang) | 煮物用醤油 | 煮物に向くように调製された醤油 |
| その他の呼び方 | |||
| ? | ウェ?カンジャン(Wae Ganjang) | 倭醤油 | 倭(日本)の醤油という意味。①醸造醤油と同義、または⑥朝鲜醤油(在来式)以外の外来式の作り方をする醤油全般をさす。 |
| ? | イルボン?カンジャン(Ilbon Ganjang) | 日本醤油 | ?倭醤油と同义 |
| ? | ケリャン?カンジャン(Gaelyang Ganjang) | 改良醤油 | ⑥朝鲜醤油に対して、製法が日本から伝わった外来の改良式醤油をさす。?倭醤油、?日本醤油と同義。 |
| ? | ムルグン?カンジャン(Mulgeun Ganjang) | 薄い醤油 | ムルグン(薄い、弱い)と表现されるうす口タイプの醤油。⑨清醤、?汁醤油をさす。 |
| ? | ユギノン?カンジャン(Yuginong Ganjang) | 有机农醤油 | 有机大豆を使用して作られる醤油 |
| ? | チョヨム?カンジャン(Jeoyeom Ganjang) | 低塩醤油 | 塩分含有率の低い醤油 |
| ? | マッ?カンジャン(Mat Ganjang) | 味醤油 | うま味食材、香辛料、薬味等で风味とうま味を加えた调味醤油。家庭でも作られるタレの一种。 |
| ? | チョ?カンジャン(Cho Ganjang) | 酢醤油 | 酢を加えた调味醤油。家庭でも作られるタレの一种。 |
韓国食品規格(KFSC)、韓国産業規格(KIS)による分類では、カンジャンは原料や加工方法によって最大5種類(醸造醤油、混合醤油、酸分解醤油、酵素分解醤油、韩式醤油)に分けられる。一般的な区別のされ方としては、色が濃くカンジャンとしての風味が強く塩味がマイルドな濃口タイプ(表中の①??が典型的)と、色が薄く塩分の高いうす口タイプ(⑨??)に分けられる。
在来式のチョソン?カンジャン(朝鲜醤油)はメジュ(説明後述)を発酵の素とする。チョソン?カンジャン(朝鲜醤油)というとき、韓国の人々は在来の伝統的な製法として、メジュを塩水に浸す甕仕込みのカンジャンを連想する。それらは自家製であるためチプ?カンジャン(家醤油)という呼び名が用いられ、昔からある在来のものという意味でチェレシッ?カンジャン(在来式醤油)とも呼ぶ。これらは熟成期間の長さにより、短期のチョンジャン(清醤)、中期のチュン?カンジャン(中醤油)、長期のジン?カンジャン(阵醤油)に区別される。一般的には熟成1~2年で色の薄いチョンジャン(清醤)がスープ用によく使われ、5年以上寝かしたジン?カンジャン(阵醤油)は、実際には10年、20年とより長く熟成させて希少品として特別な価値を持たせることもされる。甕で30年以上寝かしたジン?カンジャン(阵醤油)を味見させてもらった。時間をかけてアミノカルボニル反応が進み、色は濃く、トロリとした濃度がある。香りと味わいは複雑で、塩分がマイルドに感じられる。たんぱく質が分解されて多くのアミノ酸が生成され、うま味による塩味の抑制効果が生まれたものと考えられる。
実はこのジン?カンジャン(阵醤油)という名称は、コンビニやスーパーマーケットで売られる市販製品でもよく見かける。こちらは工場で短期間に効率よく作られたもので、色が濃く塩分が低い濃口タイプに調合された混合醤油であることが多い。甕仕込みで長期熟成されたジン?カンジャン(阵醤油)を工業製品と区別するために、同じ発音であるがあてる漢字を変えてジン?カンジャン(眞醤油)と呼び分ける人もいる。1970年代に漢字表記を廃止した韓国では、若い世代で漢字を理解する者が減り、このような呼び分けも一部の人に限られたものとなっている。
この他工场で大量生产されるカンジャンの代表的なものにヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)、クッ?カンジャン(汁醤油)、チョリム?カンジャン(煮物用醤油)がある。クッ?カンジャン(汁醤油)はうす口タイプの代表的なもので、その名の通り、スープや锅料理、ナムル等の塩味をつけるために使われる。うす口タイプであることを表现したムルグン?カンジャン(薄い醤油)ともいわれるようだが、闻き取りをする中ではあまりでてこなかった。
韩国に住む人にどのようなカンジャンを家庭で使っているか闻くと、ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)とクッ?カンジャン(汁醤油)と答える人が多い。ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)は加热调理に使われるほか、つけダレやドレッシング、食材にそのままつけて食べることが多い。スープを作るときにも、ヤンジョ?カンジャンを少量と塩で味つけすればクッ?カンジャン(汁醤油)の代用となる。そのため、料理をしない若い世代ではヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)のみを使っているという人もいる。食材にこだわりのある手作り品を好む层では、市贩製品のクッ?カンジャン(汁醤油)ではなく评判のよいチプ?カンジャン(家醤油)を购入するという人もいる。
クッ?カンジャン(汁醤油)という名称はスープ用のカンジャンとして工場で作られたイメージが強く、廉価な混合醤油タイプもあるが、中には丸大豆を原料とし、Naturally Brewedであることやメジュを用いたチョソン(朝鮮)式であることをうたったプレミアムタイプもある。韓国食品規格(KFSC)ではメジュを使用したカンジャンをハンシク?カンジャン(韩式醤油)と定義している。ここで言うメジュには大きく2タイプあり、2~3か月かけて屋外で乾燥?発酵をさせる伝統的な製法のメジュに対し、工場で菌を接種し、湿度と温度を管理した環境で2週間程度で早く作るメジュを改良メジュと呼ぶ。
一方、多くの人が使うヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)はウェ?カンジャン(倭醤油)とも呼ばれる。「ウェ?カンジャン」という名称は口語で使われることが多く、年齢が上になるほど馴染みのある呼び名となる。倭は日本を意味し、イルボン?カンジャン(日本醤油)という呼び方もできるが、ウェ?カンジャン(倭醤油)の方がより一般的である。ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)は丸大豆または脱脂大豆、小麦等を原料に麹を用いて作られる。その製法は日本から伝わったものと考えられ、在来式のチョソン?カンジャン(朝鲜醤油)に対し、外来の日本式としてウェ(倭)という言葉で呼び分けられたのであろう。ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)は工場で効率的に作られるが、より安価に製造できる混合醤油ではないNaturally Brewedであることを強調する意味でヤンジョ(醸造)と名付けられている。いわゆる日本の本醸造醤油にあたる。
ちなみに、英語圏の通販サイトでカンジャンがどう区分されて売られているかというと、ノーマルタイプのsoy sauceとスープ用のsoy sauceに大別される。ノーマルタイプは、ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)とジン?カンジャン(阵醤油)であり、スープ用はクッ?カンジャン(汁醤油)である。ヤンジョ?カンジャンとクッ?カンジャンには、丸大豆を使用しNaturally Brewedであるプレミアムタイプと、脱脂大豆を使用する一般的なタイプの2つがそれぞれある。
カンジャン売場には以上のほか、丸大豆の写真やイラストをラベルに配置し脱脂大豆ではなく丸大豆を使用していることを強調したもの、有機大豆を使用するユギノン?カンジャン(有机农醤油)やチョヨム?カンジャン(低塩醤油)の表示をしたカンジャンが売られる。また、照りツヤが出やすく煮込み料理に向くチョリム?カンジャン(煮物用醤油)、うま味食材や砂糖、果物などを加えて煮詰めて作られるマッ?カンジャン(直訳は味醤油。うま味醤油とも訳される)が並ぶ。これらは日本でいうところのだし醤油、めんつゆ、かば焼きや照り焼きのタレ、ぽん酢醤油に該当するものである。
カンジャン製造が1950年代を境に工业化されるまでは、カンジャンは家で作るものであった。「醤の味が変わると家门が灭ぶ」ということわざがあるように、家ごとに瓮で仕込む発酵调味料の出来栄えは非常に重要なものであった。冬に行うカンジャンとテンジャンの仕込み作业は、キムチを渍けるキムジャンと同様に大切な食の年中行事なのである。
実际に、今でもカンジャンを手作りすることが盛んな地域がある。3682世帯を対象とした调査(2009年)では、市贩製品ではなくチプ?カンジャン(家醤油)などを自分で调达する家庭が5世帯に1つはある。テンジャン、コチュジャンに比べればその率は低いが、日本に比べて、手作りの伝统调味料が食卓にのぼる率はかなり高いと考えられる。
市贩製品の小売店业态别売上高の统计资料によると、ホナプ?カンジャン(混合醤油)が半分以上を占め、ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)、クッ?カンジャン(汁醤油)が続く。ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)に比べホナプ?カンジャン(混合醤油)は廉価であるため、购入量としてはホナプ?カンジャン(混合醤油)の比率はより高くなる。また大众的な饮食店などの业务店で使用されるカンジャンのほとんどは廉価なホナプ?カンジャン(混合醤油)だと闻くので、実际の生产量の多くはホナプ?カンジャン(混合醤油)だと推测される。そして、家庭で使うために少し高い価格帯のヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)を选ぶ人がおり、その比率は割引店と百货店で多いことがわかる。
※割引店
韓国ではGMS(General Merchandise Store)やハイパーマーケット、スーパーセンターというような総合大型セルフサービス業態を「割引店」と呼ぶ。韓国ではEマート(新世界百貨店グループ)、ロッテマート(ロッテグループ)などが代表的。
韩国の最大手カンジャンメーカーといえばセンピョである。続いて、テサン(チョンジョンウォン)、モンゴ食品、オボク食品が続く。韩国の中でも地域性があり、モンゴ食品とオボク食品は韩国南部のキョンサン南道にあるため、近くの大きな商圏である釜山ではメジャーなブランドである。オボク食品については売上の约80%は釜山地域で、残り20%が全国的な贩売だという。この他、ロッテマートなどの割引店では笔叠商品が売られている。
都市部では工场で作られた大手メーカーの市贩製品を使用する人がほとんどであるが、地方では自家製のカンジャンを今でも作り続ける人が残っている。家内消费用に手作りしたものが味がよいと口コミで评判になり、ご近所が买いに来たり人づてに注文が入ることもあるという。カンジャン作りの名人と呼ばれる名工の逸品が、塩や酢などその他の调味料とともにデザインされて贩売されるケースもある(ソン?ミョンヒ名人の例。写真参照)。
韩国南部のチョルラナムド?タミャン郡、チョンピョンミョンで40年以上醤油作りに携わるキ?スンド名人(韩国农林水产食品部が指定する食品名人35号)のカンジャンは、サムスンファミリーが爱用しているということでも知られブランド化している。ちなみにチョンピョンミョンは2007年アジア初のスローシティに认定され注目を集めた町である。
生物多様性を保護し、消滅の危機に瀕した小規模生産の質のよい食品と小さな生産者を守る運動を行っているスローフード(NPO)では、2013年10月にアジア圏で初めての大規模な食の見本市「アジオグストAsioGusto」を開催した。韓国のコンヴィヴィウム(支部)による展示コーナーでは、こだわりのチョソン?カンジャン(朝鲜醤油)を韓国の伝統として、また守るべき調味料として紹介するブースが見られた。
※スローシティ
スローフード(NPO)が推進する市町村レベルの運動で、 普段食べなれている物の質を見直し改善し、住みやすい町となるようにガイドラインを守る。
2.韩国特有の発酵の素「メジュ」
日本では「麹(こうじ)」を使用する発酵食品が多くある。味噌は米麹?麦麹?豆麹をそれぞれ蒸した大豆に加えて米味噌?麦味噌?豆味噌にする。醤油は大豆と小麦で麹を作り、それを塩水とともに発酵させて作る。その他、日本酒、焼酎、みりん、酢なども麹によって作られる。日本の麹は、コウジカビのアスペルギルス?オリゼAspergillus Oryzaeを増殖させて作る。醤油の場合はAspergillus Sojaeも含まれる。
韓国の場合は、伝統的な調味料のカンジャン、テンジャン、コチュジャン作りに欠かせない発酵の素としてメジュMejuがある。メジュとは、大豆を煮てからつぶし、四角い型に入れて成形し、藁で結んで軒下につるして乾燥?発酵させたものである。メジュに繁殖する微生物としては、各種のRhizopus, Mucor, Aspergillus, Penicilliumなどのカビ類、Saccharomyces, Torulopsisなどの真菌類、Bacillus, Staphylococcusなどの細菌があると言われており、主には中心部に枯草菌Vacillus Subtilisなどの細菌が、表面付近ではAspergillus oryzaeなどのコウジカビが自然に繁殖する。日本の麹はできるだけ枯草菌を増殖させずAspergillus oryzaeを増殖させるように作るのに対し、メジュは枯草菌を積極的に増殖させる点が異なる。枯草菌は藁の中にいる菌で納豆菌の近縁であるため、韓国のテンジャンやカンジャンには納豆様の匂いがするとされる。藁で包んだ蒸し大豆が納豆になるように、藁で結んだメジュにもゆっくり時間をかけて枯草菌が増殖する。この枯草菌は大豆のpHを上げてアルカリ加水分解を進めるため、韓国のメジュは日本の麹と違いアンモニア臭がするとされる。市場で購入したメジュをハーバード大で分析してもらったというBenReade氏(Nordic Food Lab.の料理開発研究員)によると、そのサンプルでは枯草菌とAsperguillus株は検出できたが株の特定まではできなかったとのことである。
メジュは、市场でも売られており、2月にテンジャンを手作りする时期になると大きなスーパーマーケットでも箱入りで売られる。5.5办驳のメジュは定価110,000飞辞苍(约11,000円)で、この量で7~8リットルのカンジャンと15~20办驳のテンジャンができると考えられる。
3.韩国伝统のカンジャン作り
日本でも、かつては味噌からしみ出る液体をすくいとって味噌溜りとして使っていたが、醤油と呼ばれるものは味噌作りとは别の工程で作られるようになった。一方韩国では、晩秋に収穫した大豆で11月末から12月はじめにメジュを作り、乾燥させて保管しておいたメジュを2月に塩水に渍けこんで発酵させる。暦にこだわる家では阴暦11月の冬至の日に新大豆でメジュを作り、塩水に渍け込む作业は阴暦1月の午の日に行う。塩水に浸した后、数か月したら滤し器で滤して固形物と液体を分离する。固形物に塩を加えて瓮で熟成させたものがテンジャンとなり、液体を瓮にもどして熟成させたものがカンジャンとなる。
ソウルから东に电车で1时间半ほど行ったナムヤンジュ市チョアンミョンは、チプ?カンジャン(家醤油)作りが今でも盛んに行われる场所である。名人として知られるチャン?ミョンヒさんを访问し、カンジャンの作り方を见せていただいた。
1)メジュ作り
メジュは、11月の最终週から12月初めに仕込まれる。成形した后、一般的には屋外の轩下につるして乾燥させるが、チョン?ミョンヒさんは独自の製法として屋内のオンドル(床暖房)を入れた温かい环境の中におき、枯草菌を积极的に増殖させることをする。保管した部屋には纳豆臭があり、完成したメジュは水洗いしたあとに粘り気が出て纳豆臭がする。チョン?ミョンヒさんは、こうしてメジュを作るため、できあがるカンジャンが他と违っておいしくなるのだと思うという。チプ?カンジャン(家醤油)にはそれぞれの秘伝の作り方があることがわかる。
2)仕込み、発酵?熟成
阴暦の1月になると瓮にジャン(醤)を仕込み始め、2014年の场合は2月28日までに仕込み终えるという。カレンダーにはその期间が大きく记され、暦とともにジャン作りがされていることがうかがえる。冬の间に仕込みを终えるのは腐りにくく作りやすいためで、温かい季节なら塩分浓度をより高くしなくてはならなくなる。
前のカンジャンを取り出した后の瓮は洗わずに続けて使う。60リットル弱の水に塩约10㎏を溶かし塩分18%の塩水を作る。塩分18%になっていることを确かめるため、生卵を浮かべて确认する。メジュは、表面に极端に多くカビがはえていれば流水で洗いながらブラシでさっとぬぐい、乾かしてから使う。约15㎏のメジュを塩水に加え、炭、皮付きの栗、乾燥なつめ、唐辛子、ゴマを加える。ゴマは指先でひねりながら入れることで液面に薄く油が膜を张り、カビが出るのを防ぐという。
仕込みは以上で、塩水の用意さえしておけばあっという间に终わる。陶器の盖をして4日置き、その后はガラス盖に换える。日光が入ることで、カビの増殖が抑えられる。塩水にメジュを浸けこんでから50日目顷に搾る作业を行う。木製の滤し器で固形物のテンジャンと液体のカンジャンに分け、それぞれ别の瓮に入れ直して熟成期间に入っていく。カンジャンは最低でも6カ月间は熟成をさせる。その间に好塩菌が作用して、たんぱく质は徐々に分解されアミノ酸をはじめとするうま味成分に変わる。瓮は屋外に放置されたままで、日夜の温度変化、日照にさらされる。自然环境の中でゆっくり置くことで、その家ならではの熟成のプロセスを踏む。これまでに失败したことはないそうだ。暦に従い、代々伝わる仕込みの方法を守り、あとは自然にまかせることで家ごとの味ができあがる。ジャン(醤)作りはシンプルだからこそ今でも続いているのだろう。
熟成を1~2年させたチョンジャン(清醤)のうち、1年物よりもバランスがよくおいしい2年物を主に出荷しているとチャン?ミョンヒさんはいう。テンジャン作りに力を入れているため、カンジャンの多くはチョンジャン(清醤)の段阶で売り次々新しい瓮を仕込んでいる様子だが、特别によい出来のものや长く熟成させてきたものは、小さな瓮に入れて大切に保管している。味见をさせていただいた30年物は姑が作ったものとなる。
チョン?ミョンヒさんの10年熟成のカンジャンは、スローシティ※であるチョアンミョンの高品質食品コンテスト2013で大賞を受賞した。その甕は売らずに長く熟成させるという。香りと風味のバランスがとてもよく、今後10年、20年と熟成させたらどうなるだろうと楽しみに思った。熟成6年目に入る2008年仕込みのジン?カンジャン(阵醤油)を購入させていただいた。1,000?で15,000ウォン(約1,500円)。テンジャンは1㎏で25,000ウォン(2,500円)。スーパーで売られる混合タイプのジン?カンジャン(阵醤油)が930?入りで3,700ウォン(約370円)前後であるのに比べてかなり高価ではあるが、多くの人が買いに来るという。
チョン?ミョンヒさんは农业も行っており、有机栽培の大豆を自ら育て、こだわりの海の焼き塩を取り寄せ、薬水と呼ばれる山から涌き出る水を车で汲みに行って使っている。カンジャン作りで最も大切なことはと闻くと、「いい豆、いい水、いい塩を使うこと」だと即答した。メジュを结ぶ藁は、近所の农家から有机栽培のものをまとめて购入しているそうだ。
テンジャン、カンジャン作りは姑に教えてもらい、嫁入りしてから初めて作りだした。姑もまたその母から教えられた。韩国では、代々続く手作りの技と味が残っている。「醤の味がよければ子孙が繁栄する」という言い回しもあるほど、カンジャン、テンジャンをはじめとするジャン(醤)作りは非常に大切なものなのである。
4.カンジャンを用いる代表的な韩国料理
カンジャンは汁物、炒め物、和え物、煮物、タレ、ドレッシング、渍け物など様々な调理に用いられる。カンジャンなしには成り立たない料理の代表的なものをあげる。
◆カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油渍け)
カンジャンを使った料理でまずあげられるのがワタリガニの醤油漬けである。家庭ではヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)を使う人もいるが、もともとはチョソン?カンジャン(朝鲜醤油)を用い、専門店の中には7年熟成のジン?カンジャン(阵醤油)を使うことを売りにしている店もある。生姜や大根、唐辛子を漬けこんだタレを一旦加熱し冷ましたものに、新鮮な生きたワタリガニをそのまま漬け込む。薄味なら3日目から食べ始められる。しっかりと味をしみこませるには、漬けダレだけを1日おきに加熱しては冷ましカニを戻して漬けることを繰り返し、計7~8日間漬ける。蟹味噌の濃厚な味わいとトロリと熟成した生の身は、カンジャンの色がうっすら着く程度で、漬けダレの色から想像するほどしょっぱくはない。漬け込んであるタレを味わってみると甘味のあるマイルドな味わいで何か料理に使えそうに思ったが、通常はカニを食べておしまいとなる。ほんのりカンジャン味がしみ込んだカニの身と濃厚なカニみその味わいは、ごはんのおかずとしても、また韓国の焼酎(ソジュ)の肴としても非常に美味である。魚介類の醤油漬は、ワタリガニの他にアワビが有名で、最近は有頭のエビを醤油漬けにして名物にしているレストランもある。
◆カンジャン渍け
韩国の渍け物売场にはキムチとともに様々な种类のチャンアチが并ぶ。チャンアチとは、カンジャン、テンジャン、コチュジャンといったジャン(醤)に酢や砂糖などの调味料を加えて野菜などを渍け込んだ渍け物のことをいい、キムチや塩辛と同様に韩国の大切な保存食のひとつとなっている。それぞれの味の特徴を考えてみると、キムチは乳酸発酵による自然の酸味、塩辛はその名の通り塩味、そしてチャンアチはカンジャンをベースとするうま味と塩味の组合せということになろうか。长期保存するチャンアチは塩分が高いため、少量をごはんのおかずにしたり、肉料理と合わせたりして食べる。
チャンアチは大别すると、カンジャン味のものと、唐辛子粉やコチュジャンにカンジャン他の调味料を合わせたスパイシーなタレに渍け込むピリ辛タイプの2つに分かれる。そういえば先に绍介したカンジャンケジャン(ワタリガニの醤油渍け)には、别の味のタイプとして、カンジャンに唐辛子粉とコチュジャンを加えたヤンニョム(薬味ダレ)にカニを渍け込んだヤンニョムケジャンがある。韩国の人にとって「カンジャン味」と「スパイシーな薬味ダレの味」はどちらも欠かせない味のタイプとしてあり、いずれにもカンジャンが欠かせない调味料となっている。
カンジャン味のチャンアチの代表的なものに皮ごとのニンニク、青唐辛子、エゴマの叶などを渍けたものがある。野菜以外でも海苔やうずら卵のカンジャン渍けを见かける。家庭でもタマネギ、キュウリ、ブロッコリーの芯などをよくカンジャン渍けにするそうで、长期间保存するチャンアチと短期间で渍ける即席タイプがある。
豚ばら肉の焼肉サムギョプサルでは、サンチュとともにエゴマのカンジャン渍けを出す店がある。カリッと焼き上げた豚ばら肉をエゴマのカンジャン渍けでくるりと巻いていただく。适度な塩味とカンジャンの风味が肉によく合う。
◆味つけがカンジャンベースの料理例
チョンジャン(清醤)またはクッ?カンジャン(汁醤油)を使う代表的な料理にクク、タン、チゲなどの汁物?锅料理がある。ワカメスープ(ミヨククク)が代表的で、韩国のお祝いごとによく出され、女性が妊娠したときにも勧められる滋养のあるスープである。コムタン、ソルロンタンなど色をつけない透明あるいは白浊したスープでは塩だけで味をつけるが、その他のスープでは塩味とうま味をつけるためにチョンジャンまたはクッ?カンジャンが使われる。日本の浓口醤油を使ったそばつゆのように、浓口タイプのカンジャンが色も风味も味わいも主役となるような汁物は韩国料理では见かけない。ナムルの味つけに年配者はチョンジャン(清醤)を使い、若い世代ではヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)を使う人もいるという。汁物であってもナムルであっても、チョンジャンの代わりにヤンジョ?カンジャンを使うことができ、カンジャンの风味と色をつけないようにヤンジョ?カンジャンを少量にして、あとは塩でバランスをとる。丁度、日本の浓口醤油と淡口醤油の使い分けに似ている。
ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)、ジン?カンジャン(阵醤油)はプルコギなどの炒め物、牛カルビや鶏肉など肉の煮込み料理に使われる。ヤンジョ?カンジャンは塩味がマイルドで照りよく仕上がるため、炒め物、煮物に万能に使え、風味がよいためそのまま使うタレ、ドレッシング類への利用が多い。
三代続く老舗の料理学校として知られる Soodo Culinary and Baking Occupational Training Collegeで典型的なレシピのいくつかと料理写真の提供をいただいた。
<プルコギの味つけ>
タマネギ、ネギ、ニンニク、梨をブレンダーにかけてつぶした汁大さじ4に、カンジャン大さじ3、砂糖大さじ1、清酒大さじ1、ゴマ油大さじ1、いりゴマ小さじ1、コショウ少々を加えて混ぜ、ヤンニョムジャン(薬念醤。薬味ダレ)を作る。このタレに牛肉、タマネギ、キノコなどの材料を渍けこんでから炒める。
<チヂミのタレ>
タレのチョ?カンジャン(酢醤油)は、カンジャン大さじ 2、酢大さじ 2、水大さじ 2 と薬味の青ネギを合わせる。
<椎茸のナムルの味つけ>
カンジャン、砂糖、长ネギのみじん切りとニンニクのみじん切り、ゴマ油、以上を各大さじ1/2といりゴマ小さじ1を合わせたタレを作る。水でもどした椎茸を薄切りにしてタレと合わせ、カンジャンで味を调えた后、油で炒める。
※以上、使用するカンジャンはヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)またはジン?カンジャン(阵醤油)を想定。
5.韩国に伝わった醸造醤油
モンゴ醤油社の前身は1905年、日本人設立者 山田信訪が山田醤油醸造所として設立した。その後、1945年に韓国のKim Hong Gu氏がオーナーとなり1946年Monggoカンジャン工業社と名前を変えた。業界最大手のセンピョ社は1946年、第四位のオボク食品社は1952年にカンジャン会社として設立。第二位のテサン社は大豆製品事業をチュンジャンウォンというブランドで1996年に始めた。
1950年前後に大手カンジャンメーカーが次々設立され、工場で大規模に製造された製品が市場に出回り始めた。それ以前はカンジャンといえばチョソン?カンジャン(朝鲜醤油)またはチプ?カンジャン(家醤油)と呼ばれる手作りのものであった。各家庭で熟成期間の短いチョンジャン(清醤)が主に使われていたところに、濃口タイプのカンジャンが簡単に入手できるようになった。濃口タイプとは、ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)とジン?カンジャン(阵醤油。醸造醤油と酸分解醤油の混合タイプ)である。この混合タイプのジン?カンジャンは、もうひとつのジン?カンジャン(家醤油の長期熟成タイプ)の廉価な代用品として浸透し、同時に新しいタイプとして登場したヤンジョ?カンジャンも韓国全土に瞬く間に広がり一般化した。ヤンジョ?カンジャンが急速に広まった理由として、ジャンイム?リー氏(大韓食文化研究院 院長)は、ヤンジョ?カンジャンは塩味がマイルドでたくさん使ってもしょっぱくならず、風味がよく色とツヤがよくでるため、煮物料理や炒め物が簡単においしく仕上がるので家庭の主婦たちが使うようになったのではと考察する。
今はヤンジョ?カンジャンという言叶がよく使われるが、発売当时はこれまでになかった日本からの外来タイプの醤油ということでウェ?カンジャン(倭醤油)と呼ばれることが多かった。今でも年配者にとってウェ?カンジャンは驯染みのある呼び名である。
6.日韩両国でのカンジャン、醤油の利用
東京では、新大久保、上野に韓国食材店が集まっている。K-pop、韓流ドラマの隆盛により、韓国のコスメ、ファッションなどのブランドが日本に上陸し、日常生活の中での文化交流が急速に進んでいる。新大久保にある韓国食材店「韓国広場」「ソウル市場」などでは、数多くの選択肢ある商品が並び、ヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)、ジン?カンジャン(阵醤油)、クッ?カンジャン(汁醤油)も入手できる。輸入品であるが、日本の醤油と同等かやや低い価格であるため買いやすい。飲食店などで使うのだろうか、930?の大きなペットボトルの棚はよく売れていた。
海外に移り住む日本人の中には、食べ慣れた醤油の味への執着が強く、少々高くても日本の醤油を使うという人が多い。韓国の人の場合、どうであろうか。今回残念ながら、韓国でカンジャンを食べ慣れた後日本に移り住んだという方にお話しをうかがう機会がなかった。在日三世で、祖母の代から飲食業を営んでいた松嶋(孫)あすか氏に聞くところでは、日本の醤油で困ることはなかったのではないかと言う。一世、二世の時代には輸入カンジャンは一般的でなく、日本の醤油を使って問題なく韓国料理を作っていたとのことである。もちろん、顧客の多くが日本人であれば、食べ慣れた日本の醤油で味付けされたもので問題はないはずであるが、カンジャンの料理への使い方によるところも大きいのではなかろうか。韓国料理の中でカンジャンは、うま味を伴う塩味をつける調味料として用いられ、時には隠し味的に、時にはコチュジャンと組み合わせて唐辛子味の強い料理に使われる。カンジャンケジャンのようにカンジャンがなければできない料理もあるが、カンジャンそのものの風味を楽しむ汁物やつけ醤油にあたるものは少ない。そのため、カンジャンと醤油の微妙な差を意識しなくてもよかったのではないかと考えられる。韓国から持ち帰ったチョン?ミョンヒさんの6年物のジン?カンジャン(阵醤油)とセンピョ社のプレミアム?クッ?カンジャン(特選汁醤油)をテイスティングする機会があった。参加した日本人たちは、初めて味わう韓国カンジャンに興味津々であった。6年物のジン?カンジャンは少し濃度があり、確かに風味は違うけれどとてもおいしい、そして汁醤油は、日本の淡口醤油に似ていてしょっぱさはあるけれど味わい深くてこれもおいしい、という評価が寄せられた。韓国に旅行して現地の韓国料理を食べ慣れると、日本で食べるキムチは甘味が強く、チゲは塩味が強いというように、味付けのバランスが異なることに気付く。今後は、本場の料理を食べ慣れて、より本格的な味を家族でも再現しようとする人が増えると思われる。調味料のカンジャンについても、日本の醤油ではなく韓国のチプ?カンジャン(家醤油)をわざわざ取り寄せるという人が出てくるのではないだろうか。
ワインについては、赤玉ポートワインからフランスなど諸外国からの輸入ワインへ嗜好が移り、さらに日本ワインのよさを認識しようという流れがある。イタリア料理については、スパゲッティナポリタンからパスタ?ポモドーロやジェノベーゼといったより本格的な現地の味を求め家庭で再現するという流れとともに、日本人イタリア料理シェフによる、日本人ならではの感性でイタリア料理を昇華させた魅力も語られる。韓国料理についても今後、韓国の本格的な味の再現を求める流れとともに、日本の食材?調味料を使って韓国の人々の舌も満足させるようなテイストに仕上げるという流れの両方が出てくるのではないかと予想する。松嶋氏が主宰する韓国料理教室では、日本で入手可能な食材?調味料を使って韓国の家庭料理の味を楽しめるレシピを提供し人気を集めている。「ハンメの食卓 日本でつくるコリアン家庭料理」(NPO法人コリアンネットあいち編、ゆいぽおと、2013)も同じコンセプトである。モランボンの料理教室も大変な人気であるし、料理研究家コウケンテツ氏の料理本も数々出版されている。日経新聞のランキング調査では、キムチチゲは好きな鍋料理の上位にランキングされ、コチュジャンが冷蔵庫に入っているという家庭も段々と増えているのではないだろうか。小学校の給食にもキムチチャーハンが登場する今日、日本において現時点では韓国料理は外に食べに行くものであるかもしれないが、家庭料理のレパートリーに韓国料理が加わる日はそう遠くないと思う。
一方、韩国での日本の醤油の消费倾向はどうであろうか。日本の醤油は日本食材店のほか、割引店やチェーンスーパーマーケットでは输入食材売り场の棚に并べて売られている。日本人客の多いデパートの食材売り场では、韩国のカンジャンの棚に続いて様々なタイプの醤油、ポン酢?タレなどの醤油ベースの调味料が売られている。多くは、韩国に暮らす日本人や日本料理に亲しむ韩国の人々が买い求めるのであろう。
日本の醤油を食べる机会を韩国で闻くと、寿司、刺身に合わせて、と答える人が多い。日本の醤油と韩国のカンジャンの违いについて闻くと、若い世代では寿司や刺身はよく食べるがカンジャンと日本の醤油の违いを意识したことはない、という意见が多かった。意识して食べ比べたことがあるという人の中からは、醤油は少し色が明るくて、塩分が少なくて味がマイルドな気がする、という意见が出た。
日本人が経営する日本料理店、寿司屋では日本の醤油を一般的に使用するが、韩国人が経営する日本料理屋ではカンジャンを使用することもあるという。関税が高く日本の醤油は相当割高になってしまうため、大きな差がないのであれば日本の醤油にこだわる必要はない。また韩国にもフェという刺身料理があり、スパイシーなタレと并んでわさび醤油につけて生鱼を刺身で食べる习惯がある。フェッチッと呼ばれる刺身料理を食べさせる店では、つけダレに向くヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)が一般的に使用される。たとえば九州の甘口醤油とセンピョのヤンジョ?カンジャンを比べると、笔者が味わった感想としては、食べ惯れない九州の甘口醤油よりは醸造醤油としての共通性を有するヤンジョ?カンジャンを合わせる方が驯染みやすい気がした。
7.おわりに
以上、韩国のカンジャンについて、その种类と分类、伝统的な製法、用途、消费者の嗜好などについて述べた。笔者自身は韩国在住経験がなく、地域に长年溶け込んで生活した上での调査ではないことをお断りせねばならない。调査は英语を共通语とし、复数回の韩国调査访问を行い、韩国で食文化研究を行う韩国人の大学院生とその指导教官、韩国の大学に留学する日本人留学生の协力を得て行った。とくにカンジャンの分类と定义づけには苦労を重ねたところであるが、误りや解釈の齟齬については忌惮のないご意见?ご指摘を赐り、今后修正を加えていきたいと考えている。ハングル语の発音をカタカナ表现することの限界とアルファベット表记の统一についても今后検讨を重ねたい。
日本の醤油と韓国のカンジャンの類似性と相違性に着目し、韓国におけるカンジャンについて詳しく調べたことは、韓国の食文化理解をする第一歩として意味あることだと考えている。「近くて遠い国、また、遠くて近い国」と言われる隣国の韓国には、非常に多くの共通した食材がある。同じ食材であるのに、どうして料理や食べ方がこれほどまでに違うのか、そこにある共通する要素と固有の要素を明確に知ることは、双方の文化理解のためにも、また同じアジアの一員としてアジアの食文化を世界に発信していく上で必要なことだと考える。カンジャンと醤油は英文翻訳では同義のsoy sauceとなってしまう。その違いを英語で表現しようとすると、発音表記、固有名詞の説明、各国の製品規格の問題など、ハングル語と日本語という独自の言語を有する日韓共通の難しい問題に直面する。本文は英語版もWeb 掲載される予定であり、英訳についてのご指摘も遠慮なく頂戴できればと期待している。
アジアには多くのsoy sauceが存在する。フィリピンの濃厚でストレートな塩分を感じるタイプやタイの甘口タイプのsoy sauceに比べると、韓国のヤンジョ?カンジャン(醸造醤油)、クッ?カンジャン(汁醤油)は日本の濃口醤油、淡口醤油に類似していると考えられる。アジアのsoy sauceの分類詳細については今後細かな調査と検討が必要であるが、アジアのSoy Sauce Map的なものが構築できたら面白いと考えている。
最後に、本調査にあたり多大なご協力をいただいた梨花女子大学 栄養学?フードマネジメント学科 食文化研究室Mi Sook Cho教授と研究室のメンバー、大韓食文化研究院のジャンイム?リー院長ほか、取材に協力くださった方々に深くお礼を申し上げる。

フードコーディネーター
博士(学术)/お茶の水女子大学専门食育士
お茶の水女子大学卒業。お茶の水女子大学大学院 前期?後期課程修了。高知県出身。
大学?调理师専门学校の非常勤讲师、食育情报番组のコーディネート、地域の食资源开発?商品开発のサポート业务、食の讲座のプランニングなどを行いながら、日本の地方料理、各国料理における食材?调理法?レシピ表现などの比较研究を続ける。




































