Readings
-よみもの-
第7回 一般の部(エッセー)优秀赏
モツ焼き
四十年ほども昔の话。商店街のはずれに、夜になるとモツ焼きの屋台が出ていて、アルバイト帰りに时おり足を止めた。冷や酒コップ二杯と串十本で、ちょうど千円。炭火でカリッと焼いた甘辛だれの白モツが特にうまく、酒は受け皿にたっぷり溢れさせてくれた。贫乏大学生にとっては、たまの赘沢だった。
その日は、中学の同级生の弟に勉强を教えて、そのお宅で夕饭をごちそうになった后、屋台に立ち寄った。酔っ払いたい気分だった。コップ酒を半分ほど一気にあおり、受け皿の分を注ぎ足して饮み干す。焼きあがった白モツは、いつものように味が舌に染みこまなかった。香ばしい匂いもどこかへ消えてしまったようだった。二杯目の酒をまた半分あおって、ふうっと息をつくと、「兄ちゃん、今日は饮み方が荒いね。失恋でもしたかな」。隣から声をかけられた。白髪头の痩せた老人。何度かここで见かけたことがあった。目元が笑っていた。はあ??????と曖昧な返事をして、「人生なかなか难しいですね」。自分でも思いも寄らない言叶を吐き出していた。
人恋しかったのかもしれない。酒を饮み、白モツを噛みながら、私は老人にぽつりぽつりと话した。――中学の同级生というのは、私の初恋の人だった。ほんのりした色気を漂わせる美人で、でも当人はそんな自分の魅力に気づかないかのように、いつもころころと无邪気に笑っていた。同窓会で再会した时は、私も女性と话せるくらいに大人になっていて、近况报告をし合ううちに、弟の家庭教师をすることになった。うれしかった。勉强の后、彼女が家にいると、一绪にお茶をしたり夕饭を食べたりした。そんな日々が一年近く続いた。そして今日。家族に交じって、知らない男性が食卓についていた。N君。结婚するの、と彼女に绍介された。私より少し年上で、优しい目をした、落ち着いた人だった。おめでとうございます、と何とか言って、その后のことは覚えていない。
「恋で大事なことが二つある」。酒をついでくれながら、老人が言った。「二番目は諦めないこと。諦めなければ思いが通じることもある。で一番目は、諦めることだ。相手を困らせる恋でしかないのなら、きっぱり諦めるのが男だよ」。冬の终わりで、ジャンパーの背中が寒い分、炭火のほてりがうれしかった。白モツの味と匂いが戻ってきたようだった。やはり最高にうまかった。结局、二十本も追加して、ほおばり続けた。冷や酒もうまかった。老人はこの春に定年退职だと言った。勘定を持ってくれるというのを远虑したら、「出世してお金に余裕ができたら、若い人におごってやんなさい」と笑った。
私もこの春退职した。出世はしなかったが、モツ焼きをおごるくらいの余裕はある。人混みの向こうに屋台の暖帘が见え、香ばしい匂いが漂ってくると、つい足が引き寄せられる。
INFORMATION
「モツ焼き」
門田 弘 かどた ひろし さん(千葉県?61歳)
※年齢は応募时
他の作品を読む
これも好きかも
