Readings
-よみもの-
第11回 一般の部(エッセー)キッコーマン赏
不合格ケーキ
「焼肉のタレ、かしてぇ」
「肉じゃが作り过ぎたから、持ってきた」
私が幼い顷に住んでいた、大阪の郊外にある団地は、それ自体が大きな「家族」のようだった。母が女手一つで私と姉を育てていた我が家。谁もが、裕福ではなく、助け合って生きる风景が、日常に溢れていた。
十五歳の春。私の受験生活も、団地のおっちゃん、おばちゃん达が、阴に阳に応援してくれた。期待に応えようと、私も猛勉强。
そして迎えた発表当日。私は、第一志望の高校に落ちた。その知らせは、今のインターネット并みの早さで、団地中に伝わった。伝わったハズだった。
母の明るさ。これが「不合格」を伝える电话でも大いに発挥され、阳気な母の声に、第一报を受けた、自称「歩くスピーカー」のおばちゃんが、「合格」と闻き间违えてしまったのだ。「合格」の误报が駆け巡り、お祝いムードのおっちゃん、おばちゃん达が、我が家に押しかけてきた。
泣きじゃくる私。両手で「バツ印」を出す母。お祭り騒ぎが、あっという间に、沉黙に変わる瞬间を、私は背中で感じ取った。
沉黙を破ったのは、スピーカーおばちゃんである。彼女は、手作りの大きなスポンジケーキを持参していた。鼻をすする私の后ろで、突如、スピーカーが奇声を上げた。
「わぁー、やってもうたワ」
びっくりして振り向く私。真っ白なケーキの上に、おばちゃんのメガネが、ボトッと落ちているではないか。チョコレートで书かれていたケーキの上の文字が、无残にも溃れていた。
すると、おばちゃんは、クリームまみれのメガネをかけ、
「いやぁ、なんも见えへんわ。目ぇ悪なったんかな」「なにゆうてんの、クリームがついとるからや」。漫才のようないつもの会话が始まり、明るさを取り戻した人々の中で、私は一人、悲しみに浸っていた。すると、スピーカーおばちゃんが、ケーキを手に、近づいてきた。「ほら、アーンしたろ。残念赏や」。そう言って、大きくカットしたケーキを、私の口に放り込んだ。私は涙と一绪に、ケーキをゴクリと流し込んだ。
ふと、残りのケーキに目をやると、メガネで溃されたメッセージの残骸が见えた。
「&丑别濒濒颈辫;でとう」
やっぱり。合格祝いのケーキ。「おめでとう」の文字を见せない為に、わざとメガネを落とすという荒业。叁十年以上経った今なら、优しさの固まりだったとわかる。
あの時のケーキの味を、私は覚えていない。けれども、「おいしい记忆」と言われて、真っ先に思い出したのは、あのケーキ。「美味しさ」とは「美しい心で届けられた味」ということなのだと、改めて気付く。あの時は言えなかったけど、「ありがとう」。そして、「とっても、おいしかったです」。
INFORMATION
「不合格ケーキ」
安部 瞳 あべ ひとみ さん(大阪府?43歳)
※年齢は応募时
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