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-よみもの-
第10回 一般の部(エッセー)キッコーマン赏
チャーハンおかずに饭を食う
「もう、おかん。弁当箱の上下间违えてるやんけ。」
本来、下段の白米が上段にあることに若干の苛立ちを感じる。今日のおかずを确认するために白米をどかし、下段を覗き见ると、目を疑うしかない。下段はチャーハンだった。
「あぁ、まただ。」
ぼくが高校生のころ、毎日つくってくれる弁当で母はときどきよく分からないボケをかましてくれた。他にも「お汤はだれかにもらってください」のメモと一绪にふりかけではなくお茶渍けがかかっていたり、徳岛名物の竹ちくわだけが堂々とおかずのスペースを埋め尽くしていたり。上段に具材、下段に酢饭、别添えで海苔があり、手巻き寿司をつくれるようになっていたこともあった。
困ったことにそのタイミングは完全に母の気分次第。それがいつ行われるか皆目検讨もつかないし、数ヶ月に一回の割合で、忘れたころにやってくる。
奇妙な弁当を见た友だちは决まって大爆笑。その度に「おまえのおかん、ほんまにおもろいな」と言われることが、まだまだ思春期のぼくにはたまらなく耻ずかしかった。
家に帰って、母を问い詰めると「おもろかったやろ?」と暖帘に腕押し。それでもしつこく言い寄ると「ほな自分でつくれ」と最强の一言をくらって白旗をあげる。
正直、ふざけた弁当に苛立ちはするものの、食べられないわけじゃないし、これ以外ほとんどすべての弁当は抜群においしかった。见た目、栄养、味のすべてに非の打ち所がなく、母のつくってくれる弁当がとにかく好きだった。だからこそ、常にふつうの弁当がよかった。
たまに现れるふざけた弁当に文句をつけながら毎日を过ごし、いつの间にか卒业が近づいたある朝、母が弁当を詰めながら言った。
「あんたに教えといたるわ。おいしいだけの弁当なんて、だれでもつくれるし、コンビニの弁当も十分うまいやん。でもな、开けたらおもろい弁当なんてつくれるん私だけやぞ。」
その后ぼくは県外の大学に进学し、现在は东京で暮らしている。自分の稼いだお金を手に、好きなものを好きなだけ食べられるようになった。世界一のグルメ都市东京には、おいしい店なんて数えきれないほどある。雑誌で知った店を访ねて、学生のころでは到底手の届かない食事をすることは、今の自分を肯定してくれる。
ただ、日々の生活を送る中で理不尽なこともあるし、悔しい思いもするし、明日が不安でなかなか寝付けない日もある。そんなとき、疲れた体と心が欲するのは、星のついたレストランの料理でもなく、职人の寿司でもなければ、写真映えする流行りの食べ物でもない。
悔しいかな、开けたらクスっと笑ってしまう弁当なのだ。そんな弁当が作れるのは、この东京でさえ一人もいない。
今度、実家に帰ってリクエストしよう。
「おかん、弁当つくって!おかずはチャーハンでええわ。」
INFORMATION
「チャーハンおかずに饭を食う」
多田 大祐 ただ だいすけ さん(東京都?33歳)
※年齢は応募时
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